井戸茶碗

井戸茶碗について

井戸茶碗（いどぢゃわん、いどちゃわん）は、李朝時代の朝鮮半島で作られた高麗茶碗の一種です。この茶碗は日本において茶道具として広く知られており、特に「わび」に適うものとして珍重されています。「一井戸二楽三唐津」と称されるように、茶人たちにとって名品とされてきました。現在、大井戸茶碗 銘 喜左衛門が国宝に指定されているのはその証左です。

この茶碗は、日常生活の器や祭器として使われていた可能性がありますが、日本の茶道においてはその美しさと静けさから高く評価されています。また、朝鮮での製造者の名前は、残念ながら歴史の中で消えてしまっています。

名称の由来

井戸茶碗の名前の由来にはいくつかの説があります。その一つは、茶碗を覗き込むと井戸のような深さを感じることから名付けられたというものです。江戸時代には特に大きな器に対して「大井戸茶碗」という名前が使われ、「青井戸」や「古井戸」といった他の分類も生まれました。また、文禄・慶長の役において井戸覚弘という人がこの茶碗を日本に持ち帰ったために名付けられたという説も存在しますが、その名前自体はそれ以前から使われていたとされています。

さらに、韓国の芸術家辛奉承は、陶器の産地であるセミゴルが「井戸」を意味することとも関連付けています。

井戸茶碗の特徴

井戸茶碗の特徴として挙げられるのは、枇杷釉、竹の節高台、そして梅花皮（釉の縮れ）です。これらの特徴が、この茶碗の独自性を際立たせています。

有名な井戸茶碗

大井戸茶碗 銘 喜左衛門

この茶碗は慶長年間に大坂の商人である竹田喜左衛門の手に渡り、彼が零落した後も手放さなかったため「喜左衛門」という名が付けられました。その後、本多忠義や中村宗雪、塘氏に伝来し、松平不昧の手に渡ることで「天下の三井戸」の一つとして知られるようになりました。また、この茶碗を使うと腫れ物ができるという言い伝えも残っています。

大井戸茶碗 銘 筒井筒

奈良のわび茶人善玄から譲り受けたこの茶碗は、戦国武将の筒井順慶が所望したことからその名がつきました。重厚な碗と高い高台が特徴で、筒に例えられることから「筒井順」と呼ばれるようになりました。伝説によると、豊臣秀吉が割ってしまった近習を成敗しようとした際に細川藤孝が詩を詠んだことがあるといいます。

大井戸茶碗 銘 細川

細川忠興から伊達氏、冬木氏、松平不昧へと渡ったこの茶碗は、1978年に重要文化財に指定されました。

その他の井戸茶碗

• - 小井戸茶碗 銘 小塩
• - 青井戸茶碗 銘 柴田

製作地と研究

2000年、韓国南部の鎮海市で、山口大学農学部の宇都宮宏が井戸茶碗の高台部分を採取した事例もあります。彼の研究はこの茶碗の成分解析において重要な役割を果たしました。

これらの茶碗は、ただの器ではなく、歴史的な価値や芸術性を持った文化財として、現代においても引き続き多くの人々に愛されています。それぞれの茶碗には、物語や伝説が秘められており、茶道の精神に深く根ざした存在と言えるでしょう。

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