井野川潔

井野川潔（いのかわ きよし、1909年5月15日 - 1995年12月21日）は、日本の教育運動家です。本名は早船斌男（よしお）といい、妻は早船ちよです。

埼玉県川口市出身の井野川潔は、埼玉師範学校を卒業後、小学校教師となりました。しかし、1931年に教師を退職し、郷土社で雑誌『綴方生活』などの編集に携わりました。その後、新興教育研究所に所属し、左翼的な教育運動に参加したため、弾圧を受けることとなりました。

1934年には、同じく教育運動に関わっていた早船ちよと結婚し、共に浦和市（現在のさいたま市）で児童文化運動に取り組みました。戦時中は、科学工業新聞社や朝日映画社に勤務しました。

戦後、井野川潔は教育運動史研究会を運営し、新作家協会や児童文化の会の創立に参画しました。また、雑誌『新作家』や『子ども世界』などを主宰し、教育や文化の発展に貢献しました。さらに、『新興教育』や『綴方生活』の復刻・出版にも尽力しました。1977年には生活綴方研究会を創設し、教育運動史研究の隆盛に大きく貢献しました。

井野川潔は、教育運動家としての活動と並行して、多くの著書を執筆しました。主な著書には、『世界の産業革命』、『紡績・蒸気機関 産業革命から原子力へ 1』、『アインシュタイン 現代科学の父』、『汽車・鉄鋼 産業革命から原子力へ2』、『私たちの将来・私たちの職業 20 化学工業』、『論争・教育運動史』、『物語教師の歴史』、『技術の歴史 産業革命から原子力へ』全5巻、『クルップ 鉄鋼 井野川潔の技術の歴史 産業革命から原子力へ』などがあります。これらの著書は、教育や技術、歴史に関する深い知識と洞察を示すものであり、多くの人々に影響を与えました。また、共編著として、『いろいろの産物』、『あたらしい児童文学の創造』、『嵐の中の教育 1930年代の教育運動』、『いばらの道をふみこえて 治安維持法と教育』などがあります。

井野川潔の業績を偲び、追悼文集として『井野川潔教育と文学に生きる 早船ちよとともに』が刊行されています。この文集は、井野川潔の生涯と教育に対する情熱を伝える貴重な資料となっています。

井野川潔は、教育運動家として、また著述家として、日本の教育と文化の発展に大きく貢献した人物です。彼の活動は、今日の教育や文化にも大きな影響を与えています。

参考資料として、デジタル版日本人名大事典や、関口安義著『キューポラのある街 評伝早船ちよ』などが挙げられます。これらの資料からも、井野川潔の生涯と業績について詳しく知ることができます。

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