交通需要マネジメント

交通需要マネジメント（TDM）とは

交通需要マネジメント（Transportation Demand Management: TDM）は、道路渋滞などの交通問題に対し、自動車利用者の行動変容を促すことで解決を目指す手法です。従来の道路整備といった供給側の対策だけでは限界があるため、需要側からのアプローチとして注目されています。自動車利用者が協力し、交通量の抑制や調整を行うことで、渋滞緩和を図ります。

TDMの背景

従来、交通問題への対策は道路建設などの供給側からのアプローチが中心でした。しかし、交通量の増加や都市部への集中により、これらの対策だけでは問題解決が困難になってきました。そこで、交通需要をコントロールするという発想が生まれ、TDMが導入されるようになりました。

TDMの主な施策

TDMには、様々な施策が含まれています。以下に主なものを紹介します。

経路の変更

交通が集中しがちな幹線道路の利用を減らし、周辺の空いている道路へ誘導することで、交通量を分散させ渋滞を緩和します。

手段の変更

公共交通機関（地下鉄、バス、路面電車など）の利用促進や、パークアンドライドなどが挙げられます。自宅から目的地まで自動車で移動していたところを、最寄りの駐車場に車を停め、公共交通機関に乗り換えることで、交通量削減を図ります。また、自動車から自転車への転換も効果的です。そのためには、歩車道の分離や駐車場・駐輪場の整備が不可欠です。

自動車の効率的利用

相乗り・カーシェアリング

相乗りは、自動車の利用台数を減らし、燃料消費量に対する人員輸送効率を向上させる効果があります。しかし、通勤時間帯など、利用者の都合が合わない場合もあるため、実施が難しい場合もあります。海外では、相乗り車両専用レーンを設けている都市もあります。

共同集配

複数の企業が共同で配送センターを設け、それぞれの企業が個別に配送していたものを一括して配送するシステムです。これにより、トラックの走行距離や台数を減らし、交通渋滞や排気ガスの削減につながります。ある都市では、共同集配システムの導入により、トラックの走行距離が20%以下、台数が60%以上削減されたという事例もあります。

時間の変更

時差通勤やフレックスタイム制などを導入し、出勤時間をずらすことで時間帯による交通量の偏りをなくし、渋滞を緩和します。TDMの中でも最も一般的な施策です。自治体や企業が協力して行うことが不可欠です。フレックスタイム制の導入によって、渋滞が半減した事例もあります。

発生源の調整

職住近接や在宅勤務を推奨することで、移動の必要性を減らし、交通量を削減します。ロードプライシング（道路混雑課金）も、交通量を調整する有効な手段です。また、交通情報提供も、TDMの重要な要素です。

交通システムマネジメント（TSM）との連携

交通システムマネジメント（Transportation System Management: TSM）は、比較的低コストで短期間に実施できる施策で、交通運用（traffic operation）に関わる供給側の施策と、相乗り促進などの需要側の施策を組み合わせています。TDMによって全体の交通量を減少させた上で、交通渋滞が予想される場所で、通行抑制や交通規制を行うことで、より効果的に交通を円滑化します。

東京2020大会でのTSM

東京2020大会では、大会関係者や観客の輸送と、都市活動の安定を両立させるためにTSMが実施されました。具体的には、都心部の交通量を減らすために、高速道路の本線料金所での通行制限や入口封鎖、一般道路では環状七号線から都心部への流入制限が行われ、広域迂回やマイカー利用抑制を促しました。これらの施策は、大会前にテストも実施されました。

まとめ

交通需要マネジメント（TDM）は、多様な施策を通じて交通問題の解決を目指す取り組みです。自動車利用者の協力と行動変容が重要であり、交通システムマネジメント（TSM）と連携することで、より効果を発揮します。これらの取り組みによって、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されます。

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