交響曲第31番 (モーツァルト)

交響曲第31番 ニ長調 K. 297 (300a) - 「パリ」

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1778年に作曲した交響曲第31番は、パリの音楽界における特別な意味を持つ作品です。この交響曲は、パリの演奏団体であるコンセール・スピリチュエルの支配人ジャン・ル・グロからの依頼に応じて作られたことから、一般に「パリ」との愛称で知られています。

この曲は、モーツァルトの交響曲としては第28番以来、約3年半ぶりとなる作品で、彼がこの期間に多大な成長を遂げたことが伺えます。また、マンハイム楽派の影響を受けており、パリの聴衆が好む傾向に寄り添ったフランスの音楽様式も巧みに取り入れられています。

特に注目すべきは、楽器編成です。この交響曲では、クラリネットが初めて完全な二管編成に含まれ、従来のオーケストラの構造が刷新されました。この構成は、マンハイム楽派が優れたオーケストラを持っていたために生まれたもので、パリの楽団でもこの楽器が効果的に活用された点が新鮮です。

作品は多くの推敲を経ており、特に第2楽章がル・グロの要求により再構成されたことは、モーツァルトがこの依頼に真剣に取り組んだ証拠です。こうした過程を経て、1778年6月18日には多くの期待を集めながら初演され、観衆からの高い評価を得ました。

楽章構成

この交響曲は全3楽章で構成され、演奏時間は約18分とされています。各楽章の詳細は以下の通りです。

第1楽章: アレグロ・アッサイ

ニ長調で書かれたこの楽章は、4分の4拍子のソナタ形式で展開され、力強いリズムとメロディーが印象的です。特に、初めて耳にする鑑賞者にとっては、モーツァルトの若々しい情熱が感じられることでしょう。

第2楽章: アンダンテ

ト長調で、8分の6拍子の形式を持つこの楽章は、展開部を欠いたソナタ形式で構成されています。ル・グロの注文に応じた書き直し版も存在し、4分の3拍子のソナタ形式に変更されています。この楽章ではフルートの第2パートやクラリネット、トランペット、ティンパニが一時休息し、色彩豊かな楽器の対比が楽しめます。

第3楽章: アレグロ

最後の楽章はニ長調の2分の2拍子であり、再びソナタ形式が採用されています。活気にあふれ、全体的に朗らかな雰囲気を醸し出すこの楽章は、最後まで聴衆の注意を引き続け、交響曲を力強く締めくくります。

参考文献

• - 作曲家別名曲解説ライブラリー13 モーツァルトI（音楽之友社）

このように、交響曲第31番はモーツァルトの創作の集大成の一つであり、彼の音楽的探求の姿勢と技術革新を体感できる貴重な楽曲です。是非とも実際に音楽を聴いて、その魅力を感じていただきたいと思います。

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