交響組曲

交響組曲（こうきょうくみきょく、Symphonic Suite）

交響組曲は、主にオーケストラによって演奏される楽曲形式である組曲の一種です。しかしながら、音楽学的な視点から見た場合、この形式に明確な定義が与えられているわけではありません。そのため、どのような楽曲が交響組曲に該当するのか、厳密に線引きすることは難しいのが現状です。

特徴と位置づけ

交響組曲とされる楽曲の多くは、特定の情景や物語、人物などを描写する標題音楽としての性格を強く持っています。いくつかの独立した楽章から構成される点は一般的な組曲と同様ですが、その内容は単なる舞曲や性格的小品の集合にとどまらず、より大きな音楽的、あるいは文学的なコンセプトに基づいていることが多いのが特徴です。複数の楽章によって構成され、何らかの標題を持つことから、一つの物語やテーマを追う大規模な標題音楽である交響詩の一種、あるいはその変形として捉えられる作品も存在します。

名称について

「交響組曲」という名称が楽曲に付けられる経緯は様々です。作曲家自身が自身の作品を「交響組曲」として発表する場合もあれば、後世の研究者や聴衆によって通称としてそのように呼ばれるようになった作品もあります。定義が曖昧であるため、ある組曲が「交響組曲」と呼ぶにふさわしいかどうかについて、意見が分かれたり、明確な判断ができなかったりすることも少なくありません。

代表的な作品例

「交響組曲」と名の付く、あるいはそう呼ばれる代表的な作品は多岐にわたります。クラシック音楽においては、ニコライ・リムスキー＝コルサコフの『シェヘラザード』（当初は交響曲として発表された『アンタール』も後に交響組曲と呼ばれる）や、セルゲイ・プロコフィエフの映画音楽に基づく『キージェ中尉』、クロード・ドビュッシーの『春』などが挙げられます。また、ジャック・イベールの『寄港地』や『パリ』、レナード・バーンスタインによる映画『波止場』からの組曲も知られています。日本の作曲家では、渡辺浦人の『野人』、貴志康一の『日本スケッチ』、山田一雄の『印度』、早坂文雄の交響的組曲「ユーカラ」といった作品があります。複数人の作曲家による合作として、外山雄三、三枝成彰、石井眞木、芥川也寸志による『東京』のような例も存在します。

ポピュラー音楽からの展開

近年では、映画、テレビアニメ、テレビゲームなどのメディアのために制作された音楽を、演奏会用に管弦楽で演奏できるように編曲した組曲に「交響組曲」と名付けられるケースが非常に多く見られます。これらの中には、前述のプロコフィエフやバーンスタインの例のように、クラシックの作曲家による映画音楽を元にしたものも含まれますが、多くはそれぞれの分野で活躍する作曲家による作品です。これらの楽曲が「交響組曲」と呼ばれる場合、それは厳密な音楽形式を指すというよりは、「オーケストラによって演奏される、演奏会向けの組曲」という意味合いで用いられていると考えられます。例えば、「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」、「交響組曲 科学忍者隊ガッチャマン」、「交響組曲第2番「GR」」、「交響組曲「ドラゴンクエスト」シリーズ」、「交響組曲機動戦士ガンダムSEED シンフォニーSEEDシリーズ」などが、この範疇に含まれる代表的な作品として挙げられます。

まとめ

交響組曲は、その名の通り交響的な広がりを持つ組曲ですが、その形式や内容に関する統一的な定義はありません。クラシック音楽における標題性の強い作品から、現代のメディア音楽を基にした演奏会用組曲まで、非常に多様な楽曲にこの名称が冠されています。この多様性こそが、交響組曲という形式の曖昧さであると同時に、柔軟な性格を表していると言えるでしょう。

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