京漆器

京漆器

京漆器は、京都で製作される漆器であり、1976年に経済産業大臣によって伝統的工芸品に指定されました。その特徴は、単なる日用品としてではなく、美術工芸品としての価値を追求した点にあります。

特徴

全国の漆器産地の中でも、京漆器は特に薄い木地を使用し、入念な下地を施すことで知られています。そして、洗練された優美な蒔絵が施されるのが特徴です。京都が日本の政治・文化の中心地であった平安時代以降、京漆器は王朝貴族の祭祀装飾品から茶道具に至るまで、丹念に手間暇をかけた完成度の高い漆器を製作してきました。顧客である公家や商家と隣接して発展したため、京漆器は薄く繊細で気品高いデザインを持ち、他の産地の漆器に比べて高価です。その工芸品としての価値から、大名同士の贈答品としても用いられ、全国に広まり、各地の漆器の起源や生産工程に影響を与えました。

製作工程

京漆器の製作工程で特徴的なのは、まず薄手の木地に漆と澱粉糊で麻布を貼り付けて補強することです。その上に、京都市山科区で産出される「山科地之粉」や「山科砥之粉」などを漆で練り合わせてペースト状にした「地錆漆」や「錆漆」と呼ばれる下地材を、何層にもわたって塗り重ねます。さらに、器の角の部分をより鋭角に際立たせ、丈夫にするために「くくり錆」という補強工程を挟み、黒や赤の漆を塗り重ねていく「本堅地」という漆工芸において最も基本的な製作工程を踏みます。

この「本堅地」の工程は、漆器製作の技術が地方に広がり、各地で産地が形成されるにつれて、越前漆器、山中塗、輪島塗などの製作工程にも受け継がれていきました。しかし、これらの地域では、大量生産に対応するために作業効率が重視され、下地材に米糊などを混合することが一般的になりました。米糊を加えることで、下地を付ける作業や硬化の管理が容易になり、作業効率が向上します。しかし、樹脂分の漆や地之粉、砥之粉などのフィラーに加えて、耐水性に乏しい澱粉を配合することで、下地の耐久性は低下します。

一方、高価格な小ロット生産を得意とする京漆器では、米糊などを添加しないため、下地材全体に対する漆の割合が50重量％程度（wet重量、固形分では60重量％程度）と、樹脂分の高い下地を施すためコストはかかるものの、堅牢な器を作り上げることができます。

京漆器は、その美しさと堅牢さ、そして長い歴史に培われた技術によって、日本の漆器文化を代表する存在として、今もなおその価値を保ち続けています。

関連項目

漆器
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