京都大学大学院理学研究科附属花山天文台

花山天文台

花山天文台は、京都府京都市山科区の花山山（標高221m）の中腹に位置する、京都大学大学院理学研究科附属の天文台です。1929年に設立され、長い歴史の中で天文学の研究と教育に貢献してきました。

名称について

「花山」という地名には「かざん」と「かさん」の2つの読み方があります。天文台のある山は「花山山（かざんやま）」と呼ばれ、所在地の「花山」地区は一般的に「かざん」と読まれますが、地元では「かさん」とも呼ばれることがあります。天文台の英語名称は、歴史的仮名遣いである「くゎさん」(Kwasan) を用いています。

京都大学の天文台としての役割

花山天文台は、京都大学大学院理学研究科の附属施設であり、飛騨天文台と並ぶ重要な観測拠点です。飛騨天文台が最先端の観測を行う山頂の拠点であるのに対し、花山天文台はベースキャンプのような役割を担っています。京都大学の学生や大学院生の研究・教育施設としても活用されています。

歴史

前史

京都大学における天文学研究は、1897年に京都帝国大学理工科大学が設立されたことに始まります。当初、研究者たちは大学敷地内（現在の左京区吉田・北白川）で観測を行っていました。佐々木哲夫によるフィンレー彗星の観測は、この時期に行われ、観測拠点として「Kyoto Observatory」という名称が用いられました。

1921年には、理学部物理学科から宇宙物理学科が分割・設置され、大学の観測拠点も「大学天文台」（Kyoto University Observatory）と呼ばれるようになりました。しかし、大学周辺の市街化が進み、観測環境が悪化したため、移転が検討されることになりました。

吉田山も移転候補地として検討されましたが、風致上の問題から京都府庁の許可が得られず、実現しませんでした。その後、1927年に宇治郡山科町（当時）の花山山にある土地が地主から大学に寄付され、2年間の工事を経て、花山天文台が建設されることになりました。

設立

1929年10月に花山天文台は正式に設立されました。初代天文台長の山本一清は、研究者とアマチュア天文家の連携に尽力しました。

当時、花山天文台は東京天文台（現在の国立[[天文台]]）とともに、日本の天文学研究を牽引する重要な拠点でした。京都と東京では天文学用語に違いがあり、例えば「惑星」という言葉に対し、山本一清は昭和中期まで「遊星」を用いていました。1930年に発見された冥王星（Pluto）についても、東京天文台の研究者らが「プルートー」と呼んだのに対し、山本一清は野尻抱影が提唱した「冥王星」という名称を早くから採用しました。

1958年10月には、京都大学生駒山太陽観測所（1941年設置、1972年閉鎖）とともに、理学部附属の天文台として正式に認められました。

飛騨天文台建設以後

1968年に飛騨天文台が建設されたことで、最先端の観測拠点は飛騨天文台に移りました。その後、岡山天文台への注力によって、花山天文台の存続が危ぶまれた時期もありましたが、企業からの支援などにより、現在は一般公開や京都大学における天体観測の情報センターとしての役割を担っています。また、京都府内の高校生を対象とした実習研修や、NPO法人と連携した生涯教育にも積極的に取り組んでいます。

施設

花山天文台には、以下の様な施設があります。

歴史館：天文台で最初に開設された施設で、子午線館として使用されていました。現在は、天文台の歴史資料や天体観測資料を展示する施設として活用されています。
新館：1978年に開設された和風建築の研究施設です。宿直室や計算機室、モニター室などが設置されています。
本館：直径9mのドーム施設で、口径45cmの屈折式天体望遠鏡が設置されています。この望遠鏡は、日本国内でも数少ない重力駆動型の日周追尾装置を備えています。
別館：直径3mのドーム施設で、1910年に購入された口径18cmの屈折式天体望遠鏡が収納されています。この望遠鏡は、1986年のハレー彗星回帰の際にも観測に使用されました。現在も研修や実習に用いられています。
太陽館：1961年に設置された太陽専用の観測施設です。口径70cmの鏡で太陽を追尾し、建物全体が観測装置として機能します。

所在地とアクセス

所在地：京都市山科区北花山大峰町
交通：京都市営地下鉄東西線蹴上駅下車、タクシーで約5分。または、徒歩約45分。
交通：京都駅下車、タクシーで約20分。

関連情報

管理機関：京都大学、京都大学大学院理学研究科、京都大学大学院理学研究科附属飛騨天文台
研究会: 東亜天文学会

花山天文台は、歴史的な観測機器を大切にしながら、現在も天文学の研究と教育に貢献しています。一般公開も行われているため、気軽に訪れて、天体観測の魅力に触れることができます。

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