京都市電伏見線

京都市電伏見線：日本最初の路面電車の軌跡

京都市電伏見線は、1895年（明治28年）に京都電気鉄道によって開業した、日本初の路面電車です。琵琶湖疏水の電力を使用し、平安遷都1100年祭記念事業の一環として誕生しました。京都市街と伏見を結ぶ重要な交通手段として、特に正月三が日には伏見稲荷大社への初詣客輸送で賑わいをみせました。

伏見線は、京都市下京区塩小路高倉から竹田街道を経由し、伏見区京阪電気鉄道中書島駅までを結んでいました。路線の大部分は併用軌道でしたが、棒鼻から肥後町間には専用軌道も存在しました。京都市による買収後には、軌間が狭軌から標準軌へと変更されるなど、幾多の変遷を遂げました。

開業から廃止まで：75年の歴史

1895年の開業当初は、七条停車場（現在の踏切南）から下油掛（後の京橋）間を運行していました。その後、路線は徐々に延伸され、1914年には全線が開通しました。1918年には京都市に買収され、京都市電伏見線となりました。1923年には標準軌化され、近代的な路面電車へと進化を遂げました。

しかし、高度経済成長期に入ると、自動車交通量の増加に伴い、併用軌道による交通渋滞が問題視されるようになりました。特に、竹田街道（国道24号）を走る伏見線の併用軌道区間は、道路の東側に寄っていたため、交通の妨げになることが多くなっていました。これらの要因が重なり、1970年3月31日、75年の歴史に幕を閉じ、バス路線に転換されました。

伏見線の技術的特徴と歴史的意義

伏見線は、開業当時からいくつかの技術的な特徴を持っていました。まず、日本最初の路面電車として、その技術革新への貢献は無視できません。また、琵琶湖疏水の水力発電を利用した電力供給は、当時の電力事情を考慮すると画期的なものでした。さらに、軌間の変更や専用軌道の設置など、時代の変化に合わせて路線整備が行われていた点も特筆できます。

また、伏見線は単なる交通手段にとどまらず、地域社会に深く関わっていました。伏見稲荷大社への参拝客輸送は、地域経済にも大きく貢献していました。廃止後も、「我国に於ける電気鉄道事業発祥の地」の記念碑が建立され、その歴史的意義を後世に伝えています。

伏見線の将来：記憶と継承

伏見線の廃止から半世紀以上が経過しましたが、その歴史は人々の記憶に深く刻まれています。現在では、バス路線がその役割を担っていますが、伏見線がもたらした技術革新や地域社会への貢献は、現代社会においても重要な教訓となっています。伏見線の歴史を学ぶことで、日本の近代化や交通史を理解する上で貴重な知見を得ることができるでしょう。

参考文献

鉄道図書刊行会 編『鉄道ピクトリアル1978年12月臨時増刊 京都市電訣別特集号』鉄道図書刊行会、東京、1978年
沖中忠順、福田静二（編）、1999、『京都市電が走った街 今昔』、JTB

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