京都祇園入り婿刑事事件簿

フジテレビ系列で放送されていた二時間ドラマ枠「金曜エンタテイメント」において、1997年から2005年まで制作・放送された人気刑事ドラマシリーズが『京都祇園入り婿刑事事件簿』（きょうとぎおんいりむこけいじじけんぼ）です。全12作が作られ、俳優の三田村邦彦が主演を務めました。

物語の舞台は、古都・京都。主人公の三村邦夫は、京都府警捜査一課の刑事という顔と、祇園の格式ある老舗お茶屋「みむら」に婿入りしたという異色の経歴を持つ人物です。元々は東京で生まれ育ちましたが、大学進学を機に京都で暮らすようになり、やがて「みむら」の一人娘である冴子（演：藤谷美紀）と結婚しました。彼は署内や身内から「クニクニ」の愛称で親しまれています。年の離れた妻である冴子との関係も穏やかですが、時に邦夫の仕事に興味を示し、捜査に同行するような行動も見せます。

三村家の中心人物として、強烈な個性を放つのが「みむら」の女将であり、邦夫の姑にあたる三村加代子（演：中村玉緒）です。元芸妓という経歴を持ち、一人娘の冴子を溺愛しています。愛娘を奪われた（と感じている）婿である邦夫に対しては、何かにつけて小言や嫌味を言い放ちます。特に、危険を伴う刑事という仕事を続けることには強く反対しており、邦夫に早く刑事を辞めて「みむら」の跡取りとして家業を継いでほしいと願っています。彼女が刑事という職業に反感を抱く背景には、自身が過去に刑事の夫を亡くしているという悲しい経験がありました。夫は凶悪犯を追跡中に殉職しており、その辛い過去が彼女の邦夫に対する態度に大きく影響しています。

邦夫が勤務する京都府警捜査一課の同僚たちもシリーズを彩ります。初期には久保田（演：中倉健太郎）が、後に桐野耕平（演：前田耕陽）や山下涼子（演：美栞了）といった刑事たちが登場。彼らの上司である田所捜査一課長（演：神山繁）も、邦夫を時に厳しく、時に温かく見守る存在です。

また、三村家を取り巻く人々として、邦夫に命の恩人として懐き、様々な商売（主に鍵屋）を営む元前科者の服部（演：ベンガル）や、「みむら」で働く芸妓たち（鶴千代、豆奴など）も、物語に深みと彩りを加えるレギュラーメンバーとして登場しました。

シリーズの大きな特徴の一つは、毎回ゲストとして豪華な俳優陣が迎えられたことです。特に、事件の鍵を握る人物として、京の情緒あふれる女性を演じる美人女優がキャスティングされる傾向がありました（ただし、最終作である第12作では、バスジャック犯を演じた勝野洋がメインゲストとなっています）。

ドラマは、京都の風情ある街並みを背景に、複雑な人間関係が絡み合った殺人事件が発生し、それを邦夫が解決していくというフォーマットで展開します。婿養子という特殊な立場ゆえに、捜査の過程で三村家の家族や関係者と事件が思わぬ形で結びつくことも少なくありません。姑・加代子とのユーモラスながらも根底に愛情のあるやり取りや、京都ならではの人情、そして本格的なサスペンスが融合し、幅広い視聴者から支持を得ました。

脚本は主に石原武龍が担当し、杉村六郎や長尾啓司といった監督がメガホンを取りました。制作はフジテレビと松竹が手掛け、松竹京都映画が制作協力を行うなど、京都を拠点とする体制で作られました。京都の美しい景色と、個性豊かなキャラクターが織りなす人間ドラマ、そして緊迫感のある事件捜査が融合した、金曜エンタテイメントを代表する人気シリーズの一つと言えるでしょう。

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