京都高等工芸学校 (旧制)

京都高等工芸学校（略称：京都高工）

京都高等工芸学校は、1902年（明治35年）に設立された旧制専門学校であり、実業専門学校に分類されます。この学校は、明治時代の工業化と近代化の進展に伴い、東京と大阪に続いて3番目に設立された官立高等工業学校として、重要な役割を担いました。特に工芸（産業デザイン）分野の専門教育に力を入れていたことで知られています。

概要

創立当初、本科（修業年限3年）には色染科、機織科、図案科の3つの学科が設置されました。これらの学科は、美術学校の分野も包含しており、特に図案科は、当時の東京美術学校や東京高等工業学校に匹敵する規模を持っていました。第二次世界大戦中には、京都工業専門学校（略称：京都工専）と名称が変更されました。

戦後の学制改革により、新制の京都工芸繊維大学工芸学部（現在の工芸科学部）の母体となりました。同窓会は「京都工大会」として知られ、旧制・新制（旧工芸学部）合同で運営されていましたが、2006年に繊維学部と工芸学部が工芸科学部に統合されたことを受け、「京都工芸繊維大学同窓会（KIT同窓会）」への統合が進められています。

沿革

京都高等工芸学校時代

1899年2月：第13帝国議会において、京都市への官立工芸学校設置の建議が可決されました。
1901年3月：上京区吉田町（現在の左京区吉田泉殿町）の校地にて校舎の建設が開始されました。
1902年3月28日：勅令第98号により、京都高等工芸学校が正式に設置されました。
1903年4月：専門学校令に準拠した運営が開始されました。
1903年9月10日：第1回入学式が挙行され、本科（修業年限3年）に色染科、機織科、図案科の3科が設置されました。本科は、中学校卒業生を対象とした第1部と、工業学校卒業生を対象とした第2部に分かれていました（1923年まで）。
1905年：校歌が制定されました（『比叡の山を背に負いて』）。
1913年11月：京都在住の同窓会「多久美会」が発足しました。
1914年：学年始期が4月に変更されました。
1920年11月：大学への昇格運動が起こりましたが、中澤前校長の諫めにより、専攻科設置運動に変更されました。しかし、専攻科は設置されませんでした。
1926年5月：同窓会「京都高工会」が設立されました。
1929年：本科に陶磁器科が増設されました（旧・東京高等工業学校窯業科）。
1930年11月：愛宕郡松ヶ崎村（現在の左京区松ヶ崎橋上町）に移転しました。この年、新しい校歌が制定されました（『紫匂ふ比叡のみ山』、作詞：金井喜右衛門、作曲：信時潔）。
1932年10月：創立30周年記念祭と新築校舎落成記念祭が挙行されました。
1937年：本科の陶磁器科が窯業科と改称されました。
1939年4月：本科に精密機械科と人造繊維科が増設されました。同月、機械技術員養成科（2年制夜間課程）が設置されました。
1941年3月：機械技術員養成科が夜間専攻科（機械科、3年制）に改組されました。
1942年4月：本科に機械科と第二部精密機械科（4年制夜間課程）が増設されました。

京都工業専門学校時代

1944年4月1日：京都工業専門学校と名称が変更されました。本科学科も改称され、窯業科、化学工業科（旧人造繊維科）、建築科（旧図案科）、紡織科（旧色染科+旧機織科）、機械科（旧精密機械科+旧機械科）となりました。夜間専攻科と第二部精密機械科が統合され、第二部機械科（4年制夜間課程）が設置されました。また、別科として工業技術員養成科（機械科、1年制夜間課程）が設置されました。
1945年4月：本科に電気通信科が増設されました。
1946年：本科の電気通信科が電気科と改称されました。

京都工芸繊維大学時代

1949年5月31日：新制の京都工芸繊維大学が発足しました。旧制の京都工専は、工芸学部（機織工業学科、建築工芸学科、色染工芸学科、窯業工芸学科）の母体として包括されました。機械科、電気科、化学工業科は新制大学には引き継がれませんでした。
1951年3月：旧制の京都工業専門学校が廃止されました。
1951年4月：旧京都工専の機械科、第二部機械科、電気科、化学工業科を母体に、京都工芸繊維大学工業短期大学部が設置されました（創立時の学科：機械電気科、化学工業科。3年制夜間課程）。
1954年：意匠工芸学科、工芸学専攻科、繊維学専攻科が設置されました。
1959年：繊維別科が設置されました。
1961年：生産機械工学科が設置されました。
1963年：電気工学科が設置されました。

歴代校長

初代：中澤岩太（1903年4月 - 1918年7月）
第2代：鶴巻鶴一（1918年7月 - 1926年4月）
第3代：村上宇一（1926年4月 - 1943年12月）
第4代：田中正三郎（1943年12月 - 1945年11月）
第5代：坪井道三（1945年11月24日 - 1948年3月26日死去、前・長岡工業専門学校校長）
* 第6代：小島幸三郎（1948年3月 - 1950年11月、新制京都工芸繊維大学工芸学部 初代学部長）

著名な出身者

京都工芸繊維大学の人物一覧を参照してください。

校地

京都高等工芸学校は、京都市から寄附された上京区吉田町の校地で発足しました。1928年、学科増設により吉田校地が手狭になったことや、市電東山線延伸に伴う道路拡張により校地が削減されたため、1930年に愛宕郡松ヶ崎村に新築移転しました。松ヶ崎校地は後身の新制京都工芸繊維大学に引き継がれ、現在に至っています。松ヶ崎移転時に建設された学校本館は、当時教授であった建築家・本野精吾の設計によるもので、現在は京都工繊大3号館として使用され、国の登録文化財に登録されています。松ヶ崎への移転に伴い、旧・吉田校地は隣接する京都帝国大学に移管され、現在の京都大学西部構内となっています。

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