人文科学

人文科学の概要



人文科学は、英語で「humanities」と呼ばれ、主に人間の社会及び文化に関する研究を行う学問分野です。この領域は、人間が本質的に抱える疑問や課題を探求し、自然科学や社会科学と並んで位置付けられています。また、リベラル・アーツの一部とされ、幅広い学問が含まれています。

歴史的背景



「humanities」という言葉は、ルネサンス時代の人文主義（ヒューマニズム）から派生しており、特にこの時期の学者や芸術家であるヒューマニストは、古典や言語の研究を重視しました。しかし、当初は宗教などの神学に対置される形で、世俗的な教育カリキュラムの一部として重要視されていました。明治時代に日本において「humanities」が「人文学」と訳される際には、学問が自然科学や社会科学と対比される形で分類されていました。

このように、当時は文系・理系の明確な分け方がされており、学問の大分類が緩やかに存在しました。18世紀から19世紀にかけて政治学や経済学、法学などの独立した領域が確立され、20世紀の中頃にはこれらが「社会科学」として分けられ、それ以外の分野が人文学と呼ばれるようになったのです。

人文学と人文科学の違い



英語において「humanities」には「科学」という意味は含まれませんが、自然科学や社会科学と語調を合わせるために「人文科学」という言葉が使われています。ある文献によれば、「人文学」とは本来的には学問の学び（learning）を指し、「人文科学」は「科学（science）」を意味するとされています。このため、「人文学」という概念の再評価が求められています。

人文学の具体的な分野



日本の大学では、多くの場合、人文学系の教育や研究は文学部が行いますが、一部の大学には「人文(科)学部」が設置されています。この人文学に属する分野には以下のものがあります：

このような多様な分野が、人文学の幅を広げています。

人文科学の就職問題



日本において、1990年代の前半には人文学系の卒業生が就職において不利であるとの認識が一般的でした。この背景には、当時の育休制度やワークライフバランスが整っていなかったこと、女性の多い文学部が企業から敬遠される傾向があったことが挙げられます。しかし、近年ではそのような価値観は「時代遅れ」とされ、実際の就職状況では人文系の卒業生が劣っていることはないとされています。特に、文学部で身に付けるコミュニケーション能力や言語能力は、社会でも貴重視されるスキルとされています。

アメリカにおける人文科学の動向



アメリカ合衆国でも、人文系学部の人口は減少傾向にあり、就職率の低下が問題視されています。特に、工学系や自然科学系の分野がより高い就職率を誇るようになり、若者の間で人文系専攻を選ぶ学生が減少しています。このため、一部の著名大学においても人文科学系の学部の縮小や閉鎖が進むという現象が見られるようになりました。2010年の時点で、米国内の大学卒業生の中で人文学系の専攻の割合はわずか7%に留まっています。

人文科学は、その重要性が再評価されているものの、新たな課題にも直面している学問分野です。今後、社会の変化にどのように適応し、進化するのかが注目されます。

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