人月

人月：その定義と利用

人月（にんげつ、マンマンス、man-month）とは、1人の作業員が1か月間にこなせる作業量、すなわち工数を表す単位です。人日、人時、人週といった同様の単位も存在します。土木・建築業界のみならず、プロジェクト管理を行うソフトウェア開発業界でも広く用いられています。

人月の考え方の基礎には、作業員の能力が均一である、という前提があります。1人が20日かけて行う作業も、20人が1日で行う作業も、どちらも同じ1人月として計算されます。一般的には、1日を8時間、1か月を20日として計算しますが、実際には6時間～7時間、21日～22日など、変動することもあります。

人月を用いた工数見積もりは「人月計算」と呼ばれ、システムインテグレーターなどでは、システム構築費用を算出する際に頻繁に利用されています。人月単価に工数を掛け合わせることで見積もり費用が算出されますが、単純な計算では不十分なケースも多く、実際には様々な調整が加えられます。また、プロジェクトの進捗状況を把握する指標としても活用されます。

人月計算の問題点と対応策

人月計算は、その単純さゆえにいくつかの問題点を抱えています。

1. 作業量の増大：特に下請けの場合、作業量に基づいて費用が計算されるため、請負業者が不必要な作業を増やす傾向があります。この問題への対策としては、作業の必要性を厳格に審査し、生産性向上のための対策を講じる必要があります。

2. 見積もりと現実の乖離：見積もり作業時間が実際よりも長くなるケースも多く、不必要なコスト増加につながります。雇用側は、より精緻な時間計算を行う必要があります。

3. 作業記録のコスト：作業完了の確認のため、全ての作業を記録することを求める雇用主もいます。しかし、記録作業自体が時間とコストを要し、かえって非効率となる可能性があります。この問題への対策としては、抜き取り検査など、より効率的な確認方法を検討する必要があります。

4. 稼働日数の曖昧性：人月計算では、1か月の稼働日数が明確に定義されていません。20日とする場合と30日とする場合では、同じ「1人月」でも作業量は大きく異なります。そのため、何日換算の1人月なのかを明記する必要があります。

5. 熟練度と能力の無視：人月計算では、熟練者と初心者の区別がありません。見積もり段階では熟練者を想定していたのに、実際は初心者が作業を担当することになれば、納期遅延や品質低下といった問題が発生する可能性があります。そこで、作業員のスキルレベル（プロフィール）を明確にすることが重要です。

6. ブルックスの法則：人月の神話で有名なブルックスの法則では、遅延しているプロジェクトに人員を増やすだけでは解決しないことが指摘されています。増員によって既存メンバーの教育や調整に時間がかかり、かえってプロジェクトが遅延する可能性があります。遅延の原因が時間不足なのか、人員の能力不足なのかを正確に判断することが不可欠です。

まとめ

人月は、プロジェクト管理において便利な単位ですが、その単純化されたモデルゆえに、様々な問題点を孕んでいます。人月計算を利用する際には、これらの問題点を理解し、適切な対応策を講じることで、より効率的で正確なプロジェクト管理を行うことが重要です。単純な人月計算だけでなく、プロジェクトの特性やリスクを考慮した、より高度な見積もり手法の検討も必要です。

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