人神

人神信仰：人を神として祀るということ

人神（ひとがみ）とは、人が亡くなった後に、その人物を神として祀る信仰形態を指します。この信仰は、単一的なものではなく、多様な背景と形態を持っています。

人神信仰の主な種類

人神信仰は、大きく分けて以下の3つの種類に分類できます。

1. 祖霊の神格化：
これは、祖霊崇拝、またはエウヘメリズムと呼ばれる考え方に基づいています。祖先を敬い、その霊魂を神として祀ることで、家系の繁栄や安全を願うものです。
2. 神話の神々：
天照大御神や大国主神など、神話に登場する神々も、人神として捉えられることがあります。これらの神々は、元々は人間であったものが神格化されたという解釈も存在します。
3. 御霊信仰：
生前に恨みを残して亡くなった人物は、祟りを引き起こすと信じられていました。そのため、その霊を鎮めるために神として祀るという信仰です。菅原道真を祀る天満大自在天神、崇徳天皇、橘逸勢、平将門を祀る神田明神などがこの例に当たります。
4. 業績の顕彰：
生前に優れた業績を残した人物を、その業績を後世に伝えるために神として祀るという考え方です。豊臣秀吉を祀る豊国大明神、徳川家康を祀る東照大権現などが代表例です。

近世以降の民衆信仰

近世になると、民衆の間でも独自の人神信仰が生まれました。佐倉惣五郎のような義民や、竹垣直温(三右衛門)・岡村十兵衛のような善政を敷いた代官、新田開発に貢献した人物などが、死後も神として祀られるようになりました。また、仙台四郎のように、生前から福の神として崇められる放浪者も存在しました。

近代においても、上山英一郎のように産業育成に貢献した人物が祀られる例があります。これらの事例は、人々の生活に密着した信仰が、時代とともに変化してきたことを示しています。

人神信仰は、単なる迷信として片付けられるものではなく、人々の願いや恐れ、そして感謝の気持ちが込められた、深い文化的背景を持つ信仰と言えるでしょう。

参考文献

伊藤聡『神道とは何か』中央公論新社〈中公新書〉、2012年。ISBN 978-4-12-102158-8。
紙谷威廣「人神」『日本歴史大事典 3』小学館、2001年。ISBN 4-09-523003-7。
劉健華 「人を神に祀る習俗」に関する宗教民俗学的研究、2019年。 https://ci.nii.ac.jp/naid/500001366248

関連項目

祟り神
御霊信仰
守護聖人

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