人見光夫

人見光夫：マツダの革新的エンジン開発をリードした技術者

人見光夫氏は、日本の自動車業界における伝説的な技術者の一人です。1954年岡山県生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、1979年に東洋工業（現マツダ）に入社。以来、長きに渡りエンジン開発に携わり、その卓越した技術力とリーダーシップで、マツダの技術革新を牽引してきました。

特に、2010年に発表されたSKYACTIVエンジン開発における功績は多大です。同エンジンは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの双方において、従来の常識を覆す圧縮比14を実現。これにより、燃費性能の大幅な向上と環境負荷の低減に大きく貢献しました。人見氏の指導力と革新的な技術アプローチなくして、この画期的なエンジンの誕生はあり得ませんでした。

内燃機関開発における独自の視点

人見氏の技術者としての真価は、SKYACTIVエンジンの開発だけにとどまりません。彼は、内燃機関の改善における要素を独自の視点で整理・分類しました。具体的には、排気損失、冷却損失、ポンプ損失、機械抵抗損失という4つの主要な損失要因を特定。さらに、それらを制御するための因子として、圧縮比、空燃比（比熱比）、燃焼期間、燃焼タイミング、ポンピング損失、機械抵抗という6つの要素を抽出したのです。この分類方法は、自動車業界において人見氏が初めて行ったものとされ、その精密さと洞察力は高く評価されています。

「答えは必ずある」という信念

人見氏の座右の銘は「答えは必ずある」です。これは、困難な技術的課題に直面しても、粘り強く解決策を探し続ける彼の姿勢を表す言葉と言えるでしょう。SKYACTIVエンジンの開発においても、数々の困難を乗り越え、不可能を可能にした彼の情熱と信念が、このエンジンの成功に大きく寄与しました。この言葉は、単なる格言ではなく、彼のエンジニアとしての生き様を象徴するものです。

経歴と業績

人見氏の経歴は、彼の技術者としてのキャリアの充実ぶりを物語っています。

1954年：岡山県生まれ
1973年：岡山県立岡山朝日高等学校卒業
1977年：東京大学工学部航空工学科卒業
1979年：東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、東洋工業（現マツダ）入社
2001年：パワートレイン先行開発部長
2007年：パワートレイン開発本部副本部長
2010年：パワートレイン開発本部長
2011年：執行役員 パワートレイン開発本部長、コスト革新担当補佐
2014年：常務執行役員 技術研究所・パワートレイン開発・電気駆動システム開発担当
2015年：常務執行役員 技術研究所・パワートレイン開発・統合制御システム開発担当
2017年：常務執行役員（シニア技術開発フェロー）技術研究所・統合制御システム開発担当

これらの役職からも、彼がマツダにおけるエンジン開発の中核を担ってきたことが分かります。

著書

人見氏は、自身の経験や技術的知見を広く共有するため、著書も出版しています。

『答えは必ずある―逆境をはね返したマツダの発想力』（ダイヤモンド社）
* マツダスカイアクティブエンジンの開発―高効率と低燃費を目指して（監修、三樹書房）

これらの著作は、自動車技術に関わる者だけでなく、技術開発における問題解決や革新的な発想について学びたいすべての人にとって貴重な資料となるでしょう。

まとめ

人見光夫氏は、卓越した技術力、類まれなリーダーシップ、そして揺るぎない信念で、マツダの技術革新を牽引してきた稀有な存在です。彼の功績は、SKYACTIVエンジンという具体的な成果物としてだけでなく、内燃機関開発における新たな視点とアプローチという、より大きな遺産として、日本の自動車業界、ひいては世界に貢献し続けています。彼の物語は、未来の技術者たちにとって、大きな刺激と勇気を与え続けるでしょう。

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