人間の盾

人間の盾

「人間の盾」という概念は、軍事や政治の文脈において使用される用語であり、主に民間人を敵の攻撃から守るためにその存在を利用する戦術を指します。これは、敵に対して、目標物の近くに民間人がいることを知らせ、攻撃を思いとどまらせる狙いから行われることが多いです。また、一部の軍隊では、民間人に自ら兵士の前を進むことを強制する戦術も見られ、これは人海戦術の一部として捉えられています。

国際法の観点から、このような人間の盾を用いる行為は明確に禁止されています。特に、ジュネーブ条約第4回赤十字条約により民間人をこのような目的で使用することは戦争犯罪と見なされ、重大な罰則が科される可能性があります。交戦規定にあるように、民間人を無差別に傷つけることは法的に認められず、そのために人間の盾となっている無防備な市民に対して攻撃を行った場合、軍法会議での裁判を受け、禁固刑や軍からの追放に処せられることもあります。

実施例

歴史を振り返ると、人間の盾の使用は古くから見られ、いくつかの著名な実例があります。モンゴル帝国は捕虜を利用した例があり、元寇においてもこれが行われました。また、第二次世界大戦中にはソ連や中国が民間人を人間の盾として使用した記録があります。日本では、軍事施設の近くに民間人を居住させることで、民間人を盾にして敵の攻撃から自軍を防御する事例が報告されています。特に沖縄戦では、民間人を盾として扱い、ゲリラ戦と称する戦術が取られました。

現代でも、この手法は様々な場所で観察されています。2002年のオペレーション・ジェニンでは、イスラエル軍がこの戦術を顕著に使用していたとされています。ボスニア内戦や湾岸戦争、2003年のイラク侵攻などでも同様の事例があり、人間の盾になることを志願した市民が特に注目されることもありました。ジャーナリストの志葉玲氏は、反戦の意志を持ってイラクのバグダードに滞在した旨を記録しているのがその一例です。

特に注目すべきは、2011年以降のシリア内戦で、ISIL（イスラム国）が住民を人間の盾として利用し、逃げることを許さず、戦闘に利用したことです。このような戦術は、一般市民に深刻な危害を及ぼす危険性があり、国際社会からも強く非難されています。また、フィリピンではアブ・サヤフが市民を盾にして戦闘を行った事例もあります。

問題点

人間の盾という概念には多くの問題点が指摘されています。パレスチナ自治区では、国際連帯運動（ISM）のメンバーが人間の盾となり、イスラエル軍からパレスチナ人の住居を守る行動をする一方で、軍事目的のために民間人を盾にする行為との対比が問題視されています。このような行動から、同じ言葉を使って状況を表現することに対する批判が存在するのです。

また、非合法の武装集団が市民を盾に利用することから、戦時における民間人の保護という prinsip が棄損されることが問題であり、このような状況下で戦闘が続いた場合、無辜の市民が重大な被害を受ける事態が懸念されています。

さらに、現代の技術により、ヒューミントを使用した情報収集が進む中で、民間人の位置を特定しつつ正確な攻撃を行うことが可能になっています。このため、人間の盾の戦術が効果を持たない可能性が高く、戦争や紛争の現場でその存在意義が問われることが多くなっています。

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