人間将棋

人間将棋：歴史と各地のイベント

人間将棋は、文字通り人間を将棋の駒に見立てて行われる、大規模な将棋イベントです。豊臣秀吉が行ったとされる「将棋野試合」が起源とされ、現代では、戦国時代の兵士や腰元を模した衣装を身につけた人々が、巨大な将棋盤上で将棋の対局を行う、壮大なエンターテイメントとして親しまれています。

天童市：人間将棋発祥の地

最も有名で、歴史のある人間将棋イベントは、山形県天童市で開催される「天童桜まつり」内で行われるものです。天童市は江戸時代から将棋駒の生産が盛んな地域であり、その伝統と歴史が人間将棋の開催につながっています。

1956年に始まった天童桜まつりで、当初は地元の名士が指揮をとっていましたが、1972年からはプロ棋士を招くようになり、イベントの規模は拡大しました。1992年からはプロ棋士が対局者として直接指揮を執るようになり、全国から注目を集める一大イベントへと成長しました。

駒役となる参加者は一般公募で選ばれ、先手と後手で衣装の色が分けられています。歩兵の役は女性のみが務めるという独自のルールもあります。近年では、藤井聡太五冠が出演した年には、応募者数が観覧枠を大幅に上回るほどの人気ぶりとなりました。会場は舞鶴山山頂に整備された特設会場ですが、天候不良の場合は天童市市民文化会館に代替会場が設けられます。

東日本大震災や新型コロナウイルスの影響で一時中断したこともありましたが、現在も毎年４月に開催され、天童市の春の風物詩として定着しています。1989年には、人間チェスの盛んなイタリア・マロースティカ市と姉妹都市提携を結び、国際的な交流にも繋がっています。

その他の地域で開催される人間将棋

近年では、天童市以外にも各地で人間将棋イベントが開催されています。

青森県おいらせ町では、「全国将棋まつり」の一環として「子ども人間将棋」が開催され、小学生が駒役を務めます。大山康晴棋聖との縁から、昭和50年代に始まった将棋普及活動が、このイベントにつながっています。

兵庫県姫路市では、「人間将棋　姫路の陣」が開催され、姫路城を背景に人間将棋が繰り広げられます。西日本では初の開催となり、姫路城の修理記念事業の一環として始まりました。市内外の中学生が駒役として参加しています。

岐阜県関ケ原町では、「天下分け目の関ケ原　東西人間将棋」が開催され、関ケ原の戦いをテーマにした人間将棋が展開されます。

その他の歴史的な人間将棋

歴史を遡ると、明治末期から大正期には、骨董商が芸者を駒として用いた人間将棋の勝負を行った記録が残されています。また、1948年には甲子園球場で、プロ棋士による人間将棋の公開対局が行われ、多くの観客を集めました。

人間将棋を題材とした作品

人間将棋は、その独特な魅力から、様々な作品にも取り上げられています。テレビアニメ『ルパン三世』や漫画『3月のライオン』などでも、人間将棋が描かれており、その世界観に彩りを添えています。

人間将棋の魅力

人間将棋は、将棋の戦略性と、人間が駒となることで生まれるユーモラスな要素、そして地域の歴史や文化を融合させた、ユニークなイベントです。将棋ファンはもちろんのこと、一般の人々にとっても、見て楽しむだけでなく、参加することで、忘れられない体験となるでしょう。将棋を知らなくても、そのエンターテイメント性で楽しめる点が魅力です。今後も、各地で人間将棋イベントが発展していくことが期待されます。

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