仄暗い水の底から

『仄暗い水の底から』

概要

『仄暗い水の底から』は、鈴木光司によるホラー短編集で、1996年に角川書店から出版されました。この作品集には、水と閉鎖空間をテーマにした7編の恐怖物語が収められており、その中の一つ「浮遊する水」は映画化されています。映画版は2002年に公開され、国際的な映画祭で高く評価されました。原作は日本の怪談を集めたもので、独特の恐怖感を生み出しています。

書誌情報

• - 著者: 鈴木光司
• - 単行本: 角川書店、1996年2月
• - 文庫: 角川ホラー文庫、1997年9月
• - ISBN: 4048729373（単行本）、4041880025（文庫）

収録作

1. プロローグ・エピローグ

物語は三浦半島の観音崎で老婆と孫娘が出会うというストーリーから始まります。この二人の会話を通じて、東京湾にまつわる深い物語が紡がれていきます。

2. 浮遊する水

出版社での仕事を持つ母と幼い娘の親子が新しいマンションに引っ越し、異常な現象に巻き込まれる恐怖の物語です。屋上で見つけた赤い子供用バッグをきっかけに、2年前の行方不明事件に関わることになります。

3. 孤島

教師が恩師と共に訪れた小島で、自身の同級生の恋人の行方を追いますが、そこで目撃した恐怖の出来事が待ち受けています。

4. 穴ぐら

アナゴ漁師が妻の行方を追いながら、家族の複雑な事情に苦しむ中、思わぬ悲劇が展開されます。

5. 夢の島クルーズ

東京湾のクルーズで、予期せぬトラブルが発生。奇妙な出来事が起こり、登場人物たちは恐怖に直面します。

6. 漂流船

海で発見した無人のクルーザーに乗り込んだ主人公が、奇怪な事件の真相に迫ります。

7. ウォーター・カラー

劇団の音効係が、女優との関係を通じて不可解な現象に遭遇し、恐怖に巻き込まれる様子を描いています。

映画化

2002年に映画『仄暗い水の底から』として中田秀夫監督によって映像化されました。この映画は特に日本国内外で賞を受賞し、2005年にはハリウッドでもリメイクされ、『ダーク・ウォーター』というタイトルで公開されています。映画は原作短編集の一編「浮遊する水」に基づいており、物語の根幹をなすテーマはそのままに、映像としての恐怖を引き出しています。

あらすじ

物語の中核をなすのは、離婚調停中の母親淑美が新たに引っ越すマンションでの不気味な体験です。娘との生活を立て直そうとする淑美の周囲には、不気味な現象が続発。特に、屋上で見つけた赤いバッグが引き金となり、彼女は2年前に行方不明になった少女との関連を知ることになります。恐怖は、娘の郁子を狙っているかのように広がり、淑美は自らの身を危険にさらしながらも真相を探ろうとします。最終的には、母が真実を知り、家族を守るために立ち向かう姿が印象的です。10年後の郁子が、廃墟と化したマンションで母の霊と対面する結末は、恐怖と共に人生の理不尽さをも感じさせます。

他のメディア展開

短編集の作品は、他にもいくつかの映像化が行われています。TVドラマや、様々な映画が製作されています。特に「孤島」は、今後映画化される予定があるということで、引き続き注目されています。

この作品集は、日本のホラー文学の一端を担っており、現代における恐怖の形を巧みに表現しています。

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