今川氏家

今川氏家（いまがわ うじいえ）についての考察

今川氏家は、南北朝時代中期に活動をしていた守護大名であり、今川範氏の長男として知られています。彼には弟の今川泰範がおり、泰範は建武元年（1334年）に生まれていますから、氏家の誕生はそれより前であると考えられます。氏家の生涯についてはさまざまな記録が残されていますが、特に彼の守護職の相続に関しては複雑な事情が存在し、その内容は多くの歴史的議論を呼んでいます。

経歴

氏家の父、今川範氏が亡くなったのは正平20年（1365年）のことであり、同年10月19日には幕府から氏家への駿河守護職の補任が発給されました。翌年には、氏家に国務権限と検断職が安堵され、これにより彼は駿河国の権力者としての地位を確立しました。同じ年には、叔父の今川貞世（了俊）と共に武藤楽阿が開催する月次和歌会にも参加しています。

しかし、以降の氏家の記録は途絶えてしまいます。約2年半後の1369年5月には、弟の泰範が既に守護職を継いでいることが明らかになり、氏家がそれ以前に亡くなったことは間違いありませんが、正確な死の時期は特定されていません。

家督継承の背景

氏家に関する最も注目すべき点は、その家督継承の経緯です。彼の祖父、今川範国は範氏の先代であり、範氏が亡くなった後、範国は範氏が寵愛する弟である貞世に後を継がせようとしました。しかし、貞世自身はその意向に反対したため、最終的には氏家が守護職を引き継いだとされています。この過程は非常に複雑で、範氏の死から氏家が守護職に任じられるまでに半年もかかったことはその証拠とされています。

さらに、氏家には子供がいなかったために、彼の死に際し貞世の息子である孫松丸を後継者にしようとしましたが、これも断られたことが記録されています。結果的に、氏家の弟の中から泰範が後継者として選ばれることになりました。

このような背景から、駿河今川氏の当主については、今川氏の歴代当主の数え方に関して論争があります。一般的には、範国、範氏、そして泰範というように数えられそうですが、氏家が守護職を継承した場合は、氏家が3代目とされることになります。これにより、泰範以降の代数が1代ずれるため、氏真は11代目となるという意見も存在します。

論争の展開

小和田哲男によれば、氏家が発給した文書が存在しない一方で、範国の発給文書は継続して存在しており、氏家の守護職継承の経緯からも、実際には泰範が3代目として数えられることが正しいとされています。このような文書の存在は、氏家が歴代当主とは認められない一因とされており、議論の余地があります。

一方で、大石泰史は、足利義詮が氏家に駿河守護職を任じたことが彼の家督継承を認める証拠であると主張しています。この主張に基づいて、氏家を3代目の当主として認識する意見もあります。

結論

今川氏家は、その地位と歴史において非常に複雑な背景を持つ人物です。歴史的な文献や資料、また各研究者の見解によって、彼の存在は多面的に捉えられています。駿河今川氏の当主をどのように数えるかという問題は、今後も歴史学的な議論を呼び起こすことでしょう。

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