今昔百鬼拾遺

今昔百鬼拾遺

『今昔百鬼拾遺』は、1781年（安永10年）に発表された、著名な日本の妖怪画家・鳥山石燕による妖怪に関する画集です。この作品は、前作である『画図百鬼夜行』や『今昔画図続百鬼』に続く第3作であり、妖怪の様々な姿が描かれています。全体が雲、霧、雨の3つの巻に分かれており、それぞれの巻は特定のテーマに基づいて構成されています。

この画集は「拾遺」というタイトルからも分かる通り、前作のスタイルを引き継ぎつつ、新たに創作された内容が盛り込まれています。各妖怪の絵には解説や称賛の文章が付随しており、前作『画図百鬼夜行』とは異なり、文字情報が豊富です。この点が本作の特徴の一つと言えます。通常、妖怪を描いた作品には絵のみに注目されがちですが、『今昔百鬼拾遺』では詳細な解説があって、作品への理解が深まります。

この作品で描かれている妖怪の多くは、『和漢三才図会』などを参考にしたものが中心です。たとえば、燭陰や人面樹、彭侯、風狸といった、歴史や伝説に基づく妖怪たちが描かれています。また、『紅葉狩』や『道成寺鐘』、さらには『羅城門鬼』といった、日本の古典芸能に由来する妖怪も登場します。それらによって、日本の豊かな文化や伝承が色鮮やかに表現されているのです。

一方で、石燕の独自の創作も多く、本作には実際の伝承にはなく、彼が考案した妖怪が数多く見受けられます。これにより、画集は単なる模写や再現を超えており、石燕の個性的な視点が随所に感じられます。また、本作には『今昔画図続百鬼 彩色 雨』という題札がある巻も存在すると伝えられていますが、全体像はまだ解明されていない状態です。そのため、当時の出版形態や、彩色版が初版であったか否かについては、確かなことは言えません。

『今昔百鬼拾遺』は、日本の妖怪文化を学び、楽しむための重要な文献です。妖怪の絵画と解説がもたらす視覚的魅力や、文章による情報の豊かさは、多くのファンや研究者に愛されています。これに触れることで、日本の伝説や folklore、さらにはその芸術的表現に触れる貴重な体験ができるでしょう。

関連項目

• - 日本の妖怪一覧
• - 妖怪に関する参考文献として、京極夏彦・多田克己編著『妖怪図巻』や、村上健司編著『妖怪事典』が挙げられます。

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