今村彩子

今村 彩子

今村 彩子（いまむら あやこ）は、1979年4月10日に愛知県名古屋市緑区で生まれた日本の映画監督です。生まれつき耳が聞こえない、ろう者であることを自身の創作や活動の原点としています。

映画への歩み

幼少期、今村氏は家族と一緒にテレビ番組を楽しむことが難しい環境にありました。そんな彼女のために、父親が字幕付きの洋画ビデオを借りてきたことが、映画の世界への扉を開くきっかけとなります。映像を通じて物語を理解し、感動する体験が、後の映画監督としてのキャリアへと繋がっていきました。

豊橋聾学校高等部を経て、愛知教育大学に進学。大学在学中には、ダスキン愛の輪基金障害者リーダー海外研修派遣事業の第18期生として、アメリカのカリフォルニア州立大学ノースリッジ校へ留学しました。この留学期間中に映像制作の技術とアメリカ手話を習得し、自身の表現手段としての映像への理解を深めます。帰国後、アルバイトで貯めた資金でビデオカメラを購入し、本格的にドキュメンタリー映像の制作活動を開始しました。

現在の活動

現在は、映像作品の制作に精力的に取り組む傍ら、自身の作品を携えて全国各地で上映会や講演活動を行っています。これにより、自身の視点やろう者の世界、そして作品が伝えるメッセージを多くの人々と共有しています。また、教育の現場にも携わっており、名古屋学院大学や愛知学院大学では手話の講師を務め、後進の指導にもあたっています。

人物像

今村氏は、プライベートでは桃、芋ケンピ、白ワインといった食べ物や飲み物を好む一方で、マグロが苦手という一面もあります。好きな言葉として「夢は叶えるもの」を挙げており、その言葉通り、自身の夢を追い求め、実現させてきました。また、猫を深く愛する愛猫家としても知られています。コミュニケーションにおいては、日本語（口話）、日本手話、アメリカ手話の三言語を使いこなしています。

主な作品と評価

今村氏の作品は、自身の経験やろう者、障害を持つ人々の日常に光を当てるドキュメンタリーが中心です。劇場公開された代表作には、手話学習者の日々を追った『珈琲とエンピツ』（2011年）、東日本大震災で被災したろう者の声を集めた『架け橋 きこえなかった3.11』（2013年）、自身の生い立ちや家族との関係を深く描いた『Start Line』（2016年）、友人の死とその向き合い方を描いた『友達やめた。』（2020年）などがあります。これらの作品は、聞こえる世界に生きる人々にとっては知られざるろう者の現実を、そしてろう者にとっては共感や新たな視点を提供するものとして、高い評価を受けています。

また、文部科学省選定作品となった『ユニバーシティライフ〜ろう・難聴学生の素顔〜』（2006年）や『サラリーマンライフ〜ろう者と聴者が共に働く職場づくり〜』（2008年）をはじめ、教育や社会問題に焦点を当てた作品も多数制作しています。CM作品では、トキワ鉛筆のCM「伝えたい」が日本民放連盟賞優秀賞やギャラクシー賞入賞などを受賞しています。

その活動や作品は国内外で認められており、以下のような受賞歴があります。

第3回・第4回名古屋ビデオコンテスト優秀賞
聴覚障害者映像フェスティバル大賞
公益財団法人ソロプチミスト日本財団 「社会人ボランティアの部」受賞
日本民放連盟賞「CM部門」優秀賞
ギャラクシー賞CM部門入賞
ドイツ・フランクフルト日本映画専門映画祭ニッポンビジョン部門 観客賞（『架け橋 きこえなかった3.11』、『Start Line』）
* READYFOR OF THE YEAR 「READYFOR Lady賞」

今村彩子氏は、ろう者という自身のアイデンティティを強みとし、映像を通して社会に多様な視点や共生のあり方を問いかけ続けている、日本を代表するドキュメンタリー映画監督の一人です。

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