今橋工場

高松琴平電気鉄道（ことでん）の今橋工場（いまばしこうじょう）は、香川県高松市松福町一丁目に位置する、志度線専用の車両基地です。ことでん志度線の今橋駅に隣接しており、志度線を走行する電車車両の保守や点検、修理といったメンテナンス業務を担っています。この施設は、志度線車両の車庫機能を持つ今橋車両所と一体的に運用されており、志度線の運行を多角的に支える拠点としての役割を果たしています。地域住民からは親しみを込めて「今橋車庫」と呼ばれることも少なくありません。

施設と日常業務

今橋工場では、志度線車両の日々のメンテナンスに必要な各種設備が整えられています。施設内には、車両の塗装補修や軽度な修理を行うための車両検修設備が設けられています。また、営業運転を終えた車両や待機中の車両を留め置いておくための電車留置線が複数本あり、効率的な車両管理を可能にしています。さらに、運行によって付着した汚れを落とすための洗浄線も設置されており、洗車機を用いて車両を清潔に保つ作業が行われます。これらの設備により、車両の外観維持から機能点検まで、日々の安全運行に不可欠な作業がこの地で実施されています。

志度線の特殊事情と専用基地の役割

ことでん志度線は、1994年に他の高松琴平電気鉄道線（琴平線、長尾線）との線路が物理的に分断されて以降、「孤島路線」とも称される特殊な運行形態となっています。この分断により、志度線車両が自力でことでんの主幹車両基地である仏生山工場へ回送することが不可能となりました。こうした地理的な制約に対応するため、志度線車両の効率的な保守・管理体制を志度線内で完結させる必要が生じ、今橋駅の北側に専用の車両基地として現在の今橋工場および今橋車両所が整備されたのです。志度線車両のみを対象とするため、仏生山工場と比較すると施設規模は小さくなっています。

大規模検査と仏生山工場との連携

今橋工場で実施されるのは、主に日常的な点検や軽微な整備です。車両全体に及ぶような大規模な検査や修理が必要となった場合は、今橋工場と仏生山工場との連携体制が取られています。具体的には、検査対象となる車両から台車部分のみを車体から分離し、トレーラートラックに積載して仏生山工場まで陸送します。仏生山工場で必要な検査・整備が完了した後、台車は再びトレーラーで今橋工場へ輸送され、車両本体に再取り付けされます。このように、物理的な分断がある中でも適切なメンテナンスが行われるよう工夫されています。このため、志度線車両の車体に記載される検査標記は、大規模検査の実施場所である「仏生山工場」と記されています。これは、志度線の運行環境に対応した、高松琴平電気鉄道独自の車両保守体制を反映しています。

歴史

今橋工場のルーツは、志度線の前身である東讃電気軌道が1911年に開業した際に開設された車両施設に遡ります。

その後、1969年には一旦その機能が閉じられ、車両検修の拠点は瓦町駅構内に設けられた瓦町検車区へ移されました。

さらに、1978年には瓦町検車区が現在の今橋駅近接地へ移転し、今橋検車区（現在の今橋車両所）としてこの地が再び志度線車両の保守・管理拠点となります。

そして、1994年に前述の通り志度線が他の鉄道路線から物理的に分断されたことに伴い、志度線専用の車両検修施設としての必要性が高まり、今橋工場が復活・整備されました。これにより、分断された環境下でも志度線車両の安全運行を支える体制が整いました。

志度線の運行を支える重要な施設

このように、今橋工場は幾度かの変遷を経て、現在の形で高松琴平電気鉄道志度線の車両保守・管理を担う不可欠な施設となりました。日常的な点検・清掃から、仏生山工場と連携した大規模検査への対応まで、多岐にわたる業務を通じて、志度線の安全で快適な運行を日々支えています。地域住民の足として、今橋工場はこれからも重要な役割を果たし続けます。

もう一度検索