今沢慈海

今沢慈海（いまざわ じかい）は、1883年（明治16年）に愛媛県西条町（現在の西条市）で生まれ、1968年（昭和43年）に85歳で生涯を閉じた、明治から昭和期にかけて活躍した僧侶であり、図書館学者です。幼名は市次郎、別号として天瑞や南岳を用いていました。

熱心な仏教徒であった母の影響を受け、臨済宗の古刹である保国寺の養子となり、同寺を継ぐべく育てられました。西条中学校（現在の愛媛県立西条高等学校）を卒業後、第五高等学校を経て、1907年（明治40年）に東京帝国大学哲学科倫理学科を卒業。翌年の1908年（明治41年）7月には同大学大学院を修了しています。

1913年（大正2年）に東京市立日比谷図書館の職員となり、翌年には31歳という若さで館長に抜擢されました。その後、日本図書館協会の副会長に就任。1921年（大正10年）からは20年間にわたり図書館員教習所の講師を務め、図書館員の育成にも力を注ぎました。また、日本図書館協会会長や同協会専務理事も歴任し、1929年（昭和4年）からは東京市の市立図書館の総責任者として、都内の図書館運営を統括しました。

1934年（昭和9年）には、成田山新勝寺貫主の荒木照定の依頼により、成田中学校の校長に就任。1940年（昭和15年）に校長職を辞した後、1948年（昭和23年）から成田山教育・文化・福祉財団の理事長兼成田図書館の館長を務めました。

今沢慈海は、首都東京の図書館長として公共図書館の普及に尽力するとともに、図書館学の研究にも積極的に取り組みました。また、仏教研究にも造詣が深く、『梵文典』や『図書館経営の理論及実際』などの著作を残しています。

主な著作

『図書館経営の理論及実際』（叢文閣、1926年）
『不動尊の霊験』（不動全集刊行会、1941年）
『了翁禅師小伝』（日本図書館協会、1964年）

主な編書

『児童読物 大正10年5月迄』（三省堂、1921年）
『若水 - 東皐句集』（荒木照定、成田山文化財団、1954年）
『梵文典 - 表解詳説』（成田山新勝寺、1958年）
『成田図書館周甲記録』（成田図書館、1961年）

主な共著

『児童図書館の研究』（竹貫直人との共著、博文館、1918年）

主な訳書

『図書館建築』（シー・ハッドレイ著、1928年）

主な共訳

『小図書館管理法』（ミニー・クラーク・バドロング著、神絢一との共訳、間宮商店、1926年）

追悼集

* 『今沢慈海先生追悼録』（成田山教育文化福祉財団、1969年）

今沢慈海は、図書館学と仏教研究の両分野において、多大な功績を残した人物として、その名は今もなお、多くの人々に知られています。

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