今泉篤男

今泉篤男：日本の美術批評を牽引した巨匠

今泉篤男（1902年7月7日-1984年1月19日）は、20世紀日本の美術界において、その批評活動で大きな影響力を持った美術評論家です。山形県に生まれ、旧制山形高校を経て東京帝国大学を卒業。その後、1932年にはヨーロッパに渡り、パリ大学とベルリン大学で研鑽を積みました。この経験は、彼の批評眼を国際的な視野で養う上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

1934年に帰国した今泉は、本格的に美術評論家としての活動をスタートさせます。その鋭い洞察力と深い知識に基づいた評論は、多くの美術愛好家や芸術家たちに支持され、日本の美術界に大きな影響を与えました。彼は単なる批評にとどまらず、美術界の発展に積極的に貢献しました。1936年には美術批評家協会を創設し、その発展に尽力。さらに、1952年には国立近代美術館の次長、1967年には京都国立近代美術館の館長に就任し、日本の近代美術の振興にも大きく貢献しました。京都国立近代美術館館長職は1969年まで務めました。

彼の活動は、美術館の運営や展覧会の企画にとどまりません。数多くの著作を通して、美術史や芸術論に関する深い知識を一般にも広く伝えました。代表的な著書には、『ルノアル』（1938年）、『ゴッホ』（1951年）、『西洋の美術』（1956年）、『現代画家論』（1958年）、『現代美術の作家たち』（1972-75年）、『今泉篤男著作集』（1979年）などがあります。これらの著作は、今日でも美術史研究や美術教育において重要な参考文献として活用されています。単著以外にも、岡鹿之助氏との共編による『世界の名画』（1951年）、山田智三郎氏との共編による『西洋美術辞典』（1954年）など、多くの編著書も出版しており、日本の美術に関する知識の普及にも大きく貢献しました。

今泉篤男の活動は、単に作品を批評するだけでなく、美術史の解明、現代美術の動向の分析、そして未来への展望を示唆するものでした。彼の業績は、日本の美術批評のレベルを高め、美術文化の発展に大きく寄与したと評価できます。彼の残した著作や活動は、現在でも日本の美術界に大きな影響を与え続けており、今後も美術史研究において重要な位置を占め続けるでしょう。後進の美術研究者や批評家たちにとって、今泉篤男は常に模範であり続ける存在と言えるでしょう。彼の多大な貢献は、日本の美術史に永遠に刻まれるものです。

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