仔羊のいる聖家族

ラファエロの傑作『仔羊のいる聖家族』

『仔羊のいる聖家族』は、著名な画家ラファエロ・サンティが1507年ごろに制作した油彩画で、マドリードのプラド美術館に収蔵されています。本作は、聖母マリアと幼児イエス・キリストとその背後に聖ヨセフを描いた情景が特徴であり、聖家族の絆とその神聖性が表現されています。作品名にある「仔羊」は、キリストの犠牲を象徴しており、視覚的に重要な役割を果たしています。

作品の歴史と所有権

本作の初期の所有者は不明ですが、1703年にはローマのファルコニエリ・コレクションに保存されていたことが確認されています。その後、スペインの王室コレクションに加わり、1724年にはイタリアの画家カルロ・マラッタが王のために購入した作品と見なされることもありました。さらに、作品は18世紀にエル・エスコリアル修道院に移された後、1837年にプラド美術館に所蔵されています。

オックスフォードのアシュモレアン博物館には、本作の準備素描が残っており、その重要性は多くの模倣作品からも伺えます。これは、この作品が非常に高い評価を受けた証拠であると言えます。

構図と芸術的影響

本作は、聖母マリア、幼児イエス、聖ヨセフ、そして仔羊という主要な人物を横に並べたピラミッド型の構図を持っています。ラファエロは、同時期の巨匠であるレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロからの影響を受けており、特に彼の作品から得たインスピレーションが見て取れます。例えば、ミケランジェロの『聖家族』では幼い洗礼者ヨハネを含む場面が描かれていますが、ラファエロは代わりに聖ヨセフを配しています。

また、レオナルドの作品からは、聖母マリアの構図に関する新しい発想や、人物の自然な表情を引き出す技法を学んだとも考えられています。聖母と聖ヨセフは、幼子イエスを見る視線を交わすことで、その慈愛に満ちた絆が感じられるように表現されており、この点はラファエロ特有のスタイルとされています。

豊かな色彩と背景の描写

ラファエロは、レオナルドとは異なり、より鮮明で豊かな色彩を好んで使用し、登場人物の表情や姿勢に自然さを持たせることを追及しました。彼の風景描写には、イタリアの建築物が描かれていますが、そのスタイルは北方のエングレービングからの影響を感じさせます。また、前景の植物の描写は、彼の若い頃にフィレンツェでハンス・メムリンクの作品を研究していたことを示唆しています。

総じて、ラファエロの『仔羊のいる聖家族』は、その構図や色彩、表現において、彼の感受性と技術の高さを示す重要な作品です。聖家族の愛と犠牲のテーマが一体となった象徴的なこの作品は、美術史においても特別な地位を占めています。

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