仕掛品

仕掛品（しかかりひん）

製造業において、生産の過程にあり、まだ最終製品として完成していないものを「仕掛品（しかかりひん）」と呼びます。英語では “work in process” や “in-process inventory” と表記されます。これは、投入された原材料に対して、何らかの加工が施され、製品化に向けて作業が進行している状態を指します。

仕掛品と半製品の違い

仕掛品と似た概念に「半製品」がありますが、両者には明確な違いがあります。最も大きな違いは、それ単独で販売できるか否かという点です。

仕掛品: 製造の途中にあり、その状態では単独で販売したり、交換価値を見出したりすることが難しいものです。例えば、家具製造において、木材が切断され、組み立ての途中であるが、塗装や仕上げが全く施されていない状態などがこれにあたります。この状態では、家具として機能せず、そのまま顧客に販売することは想定されていません。
半製品: 製造の途中段階ではあるものの、その状態である程度独立した製品として販売が可能であったり、別の製品の部品として外部に販売できたりするなど、単独での価値が認められるものを指します。例えば、ある電子機器メーカーが、自社製品に組み込むための特定部品を製造しており、その部品自体も独立して別の企業に販売できる場合、その部品は半製品として扱われることがあります。

つまり、最終製品になるための製造プロセスの一部である点は共通していますが、途中の段階で販売や独立した使用に耐えうるかどうかが、仕掛品と半製品を区別する基準となります。

会計上の位置づけ

企業会計において、仕掛品は「仕掛品勘定」という名称で扱われる勘定科目です。これは、企業が保有する財産である「棚卸資産」の一つに分類されます。棚卸資産には、原材料、貯蔵品、半製品、製品、商品などが含まれますが、仕掛品もこれらの資産の一部として企業会計上で適切に管理・評価される必要があります。

棚卸資産は通常、一年以内に現金化される見込みが高い資産であるため、「流動資産」として扱われます。したがって、仕掛品も貸借対照表上は流動資産の部に計上されることになります。

仕掛品の金額を正確に把握することは、企業の原価計算においても非常に重要です。製造活動に投じられたコスト（原材料費、労務費、経費など）は、最終的に完成品や仕掛品に配分されます。期末の仕掛品棚卸高を正確に計算することで、当期に完成した製品の製造原価を適切に算出することが可能となります。

プロジェクトマネジメントにおける意味

会計や簿記の分野以外では、プロジェクトマネジメントの文脈で「仕掛かり」という言葉が使われることがあります。この場合、「仕掛かり作業」といった形で、現在進行中であり、まだ完了していないタスクや作業を指す意味合いで用いられます。これは、製造業における「仕掛品」が「製造途中の状態」を指すのと通じる概念と言えるでしょう。

まとめ

仕掛品は、製造業の生産プロセスにおける中間段階を会計上捉えたものであり、原材料に加工が施された未完成の状態でありながら、棚卸資産としての価値を持つものです。半製品とは販売可能性の有無で区別され、流動資産として貸借対照表に計上されます。その正確な把握は、企業経営における在庫管理、原価計算、そして利益管理にとって欠かせない要素となります。

（注：本記事は一般的な解説であり、特定の企業会計基準や法規に準拠した詳細な会計処理を示すものではありません。）

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