仙人峠道路

仙人峠道路とは

仙人峠道路は、岩手県釜石市甲子町から遠野市上郷町に至る全長18.4kmの国道283号のバイパスです。この道路は、東北横断自動車道釜石秋田線に並行する自動車専用道路として整備され、高速道路ナンバリングでは「E46」が割り当てられています。現在では、釜石自動車道の一部として案内されています。

この道路は、仙人峠の南側、箱根峠と土倉峠の中間を通過し、釜石と遠野を結ぶ重要なルートとなっています。全区間が国直轄の「指定区間」として管理されており、旧道である「仙人道路」のバイパスとして建設されました。岩手県側の資料では、この道路は「仙人道路改築事業」として記録されています。

道路の特徴

仙人峠道路は、旧街道の仙人峠から南に約4.5km離れた山中を通過します。道路の約6割は新仙人トンネルなどのトンネルや橋梁で構成されており、旧道にあった急カーブは解消され、最も急な坂の傾斜も9.6%から4%に緩和されました。また、旧仙人トンネルの幅員が5.1mであったのに対し、新設されたトンネル群は車道幅が約2倍、断面積が約2.3倍と大幅に拡大され、より安全で円滑な交通が確保されています。

歴史

開通までの道のり

仙人峠は、かつて遠野盆地から北上高地を越えて釜石に通じる最も険しい峠の一つでした。明治初期までは徒歩での通行を余儀なくされ、大人でも3時間以上かかる難所でした。大正時代に鉄道が建設され、1939年には国鉄山田線が開通したことで、盛岡と釜石間の移動は鉄道が主流となりました。しかし、1947年のアイオン台風により山田線が長期不通になると、再び仙人峠が利用されるようになり、終戦後の食糧難による米の買い出しなどで、峠越えをする人が多く見られました。

その後、1950年に国鉄釜石線が全通し、人の往来は大きく改善されました。しかし、戦後のモータリゼーションの発達により、仙人峠の道路整備の遅れが再び問題となりました。この状況を受け、岩手県は1952年に県道盛岡釜石線の改良工事に着手し、1954年には全長2,528mの仙人トンネルが開通しました。その後、工事は日本道路公団に引き継がれ、1959年には仙人トンネルを含む約10.2kmの仙人有料道路（通称：仙人道路）が開通しました。

仙人道路は、1970年に一般国道283号に指定され、1980年には無料化されました。しかし、物流の高度化や交通量の増加により、急勾配や急カーブが多い仙人峠は、再び交通の難所となりました。このような状況を打開するため、1986年に岩手県内の13市町村が「仙人峠道路改良整備促進期成同盟会」を組織し、道路改良の運動を始めました。

1987年には、釜石市が「仙人・1000人総決起大会」を開催し、1988年には市民団体が「仙人峠道路改良整備釜石市民会議」を結成するなど、官民一体となって道路建設を推進しました。市民からの寄付によって運動資金を賄い、国への陳情も行われました。これらの活動が実を結び、仙人峠道路は1992年に事業着手されました。

開通後の影響と高速ネットワークへ

新仙人トンネルの掘削時には、1分間に70トンもの湧水が発生するなどの困難もありましたが、2002年に無事貫通し、2007年 3月18日に仙人峠道路が開通しました。この開通は地域住民の悲願であり、開通パレードや沿道での歓迎イベントには約3000人の市民が参加しました。また、開通から1年後の2008年には、滝観洞ICが開通し、そのニュースは地元メディアで大きく報じられました。

仙人峠道路の開通により、国道283号の交通量の約8割が本道路に移行しました。これにより、地方医療環境の改善、物流コストの削減、安全性の向上、観光振興、事故の減少、所要時間の短縮など、多岐にわたる効果がありました。東日本大震災時には、沿岸部の道路が寸断された中で、仙人峠道路が「命の道」として救命・救援活動に大きく貢献しました。

2012年には制限速度が引き上げられ、両端の接続道路も復興事業として整備されました。2019年3月9日には、仙人峠道路を含む釜石自動車道が全線開通し、高速ネットワークに組み込まれました。これにより、仙人峠道路はさらに重要な役割を果たすようになりました。

外部リンク

国土交通省東北地方整備局三陸国道事務所釜石維持出張所
峠物語仙人峠の変遷
岩手県遠野土木センター
道路都市チーム

もう一度検索