仙台市民歌

仙台市民歌

「仙台市民歌」は、宮城県仙台市の市歌として、市民に長く親しまれてきた楽曲です。その制定は、1931年（昭和6年）に遡ります。

制定の経緯

きっかけは、地元新聞である河北新報社の創刊35周年記念事業でした。同社が市民歌の歌詞を公募し、その広告が1931年1月17日の紙面に掲載されました。河北新報社が提唱した市民歌制定の意義は、当時の社会情勢や市民の連帯感を高めることにあったと考えられます。

歌詞の審査には、堀内敬三、土井晩翠、小宮豊隆といった著名な文化人が名を連ねました。約3000篇もの応募作品の中から、一次審査で44篇、最終候補として9篇が選ばれ、最終的に一等入選作が決定しました。二等には、詩人の石川善助が変名で応募した「石川左京」の作品が選ばれています。作曲は、入選作決定後に堀内敬三が担当しました。完成した歌詞と楽譜は、同年7月11日付の河北新報に別刷りの付録として掲載され、市民に広く紹介されました。

仙台市への寄贈と発表

同年10月9日、河北新報社から仙台市へ楽曲が寄贈されました。市役所は、11月3日の明治節記念式典で参加者による斉唱を行うことを約束し、そのために練習会を開催しました。また、10月28日には、仙台市主催の小学校児童体操大会において、連坊小路尋常小学校の児童が市民歌に合わせてマスゲームを披露しました。

発表音楽会は、明治節後の11月14日に仙台市公会堂（現在の仙台市民会館）で、仙台市と河北新報社の主催、宮城県の後援により開催されました。同月には、ビクターレコードから徳山璉の歌唱によるSPレコードが発売され、B面には仙台蔦奴が歌う新民謡「伊達小唄」が収録されました。制定当日からは、仙台中央放送局（JOHK）が立町尋常小学校児童による斉唱を放送しました。

戦後の状況と現在

戦前・戦中は盛んに演奏された「仙台市民歌」でしたが、戦後は歌詞の一部表現が軍国主義的であるとして、公的な行事での演奏が自粛されるようになりました。そのため、同時期に制定された福岡市歌と同様に、市民の認知度は低下しました。しかし、民間のコンサートで演奏されたり、広報紙で紹介されるなど、折に触れて取り上げられる機会はあります。

1989年（平成元年）には、市制100周年と政令指定都市移行を記念して、ダ・カーポが歌唱する「風よ雲よ光よ」が“新仙台市民歌”として制定されました。ただし、「仙台市民歌」が廃止されたわけではなく、現在も存続しているため、新旧2曲の市歌が並立する状態となっています。

作詞者について

「仙台市民歌」の作詞者である佐々木青（本名：佐々木精一）は、詩人、学芸員として知られています。号は米青。黄金山神社の社司を務めた書家の佐々木巴渓を祖父に持ちます。入選時は斎藤報恩会博物館に勤務しており、詩人として著名でしたが、「仙台市民歌」入選から3年後の1934年（昭和9年）に38歳で亡くなりました。

「仙台市民歌」は、仙台市の歴史と文化を象徴する歌として、これからも歌い継がれていくことでしょう。

もう一度検索