仮想敵国

仮想敵国

仮想敵国（かそうてきこく）とは、軍事戦略や作戦計画を策定する際に、将来的に軍事衝突が起こる可能性のある国を指します。これは単に敵国を指すものではなく、あくまで戦略的な想定に基づくものであるため、必ずしも敵国となる訳ではありません。日本の旧軍では「想定敵国」、自衛隊用語では「対象国」と表現されることもあります。

概説

仮想敵国は、国防政策や軍事戦略の立案に不可欠な要素であり、実際に必要になる兵力や装備品の量を想定するための基準となります。仮想敵国は大きく分けて三つのタイプに分類できます。

1. 必然的な仮想敵国: 戦争の勃発が非常に高い関係にある国。
2. 可能的な仮想敵国: 戦争が起こりうるが、必ずしも確実でない国。
3. 純仮想敵: 実際には戦争が発生するリスクは低いものの、軍事力の形成や計画の基準として設定される国。

国防計画を立てる際には、具体的な兵員数や装備の必要量などを仮想敵国を基に計算するため、ごく現実的な国家を対象とすることが多いです。特に、隣国や利害の対立があり得る国が選定されることが一般的です。

歴史的事例

歴史上のさまざまな国が仮想敵国を設定してきました。アメリカ合衆国では、友好国が敵対国に転じたケース（リビアやイランなど）も視野に入れた国防計画が策定されています。特に第一次および第二次世界大戦中には、特定の国を仮想敵国に定めたカラーコード[[戦争計画]]が存在しました。

フランスにおいては、ドイツを仮想敵国として長期間にわたり防衛政策を展開し、補強のためのマジノ線を築造しましたが、一部の防衛計画は結果的に期待した効果を得ることができませんでした。

ドイツでも、ビスマルク時代にはフランスを仮想敵国にして外交戦略を推進しましたが、後の第一次世界大戦ではロシアとの関係が重要視され、総力戦においては旧来の設定が影響を及ぼしたケースが見られました。

日本においても、歴史の中でさまざまな国に対して仮想敵国を定めてきた経緯があります。日中戦争やアメリカとの衝突を想定した装備の整備がなされていましたが、時代の変遷に伴い仮想敵国の概念も変化していきました。

現代的事例

現代においても、日本は北朝鮮の弾道ミサイル防衛を行いながら、中国への脅威にも対応しています。特に南西諸島への部隊の配備などは、実際の脅威を反映した作戦計画の一環となっています。

また、韓国の日本に対する見解は変化しており、両国は共通の脅威として中国や北朝鮮を認識し、協力体制が進んでいます。アメリカにおいては、日本との間の緊張状態を考慮しながら戦略を層化しています。

このように、仮想敵国という概念は、各国の安全保障や国防政策形成の根幹を成すものであり、時代や国によってその内容や意義が多様に展開していることがわかります。

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