仲資王記

『仲資王記』（なかすけおうき）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した神祇伯・仲資王（みなもとのなかすけ）が著した日記です。神祇伯とは、古代から中世にかけて朝廷における神祇祭祀を統括した神祇官の長官であり、仲資王は源氏の出身でした。この日記は、当時の社会情勢や神祇官の活動を知る上で非常に重要な史料とされています。

現在確認されている『仲資王記』は、以下の8年分、計8巻です。

治承元年（1177年）
文治5年（1189年）
建久5年（1194年）
元久元年（1204年）
建永元年（1206年）
承元元年（1207年）
建暦元年（1211年）
建保元年（1213年）

これらの記述からは、当時の神祇官の具体的な活動や、その官衙領（官庁の所領）に関する詳細な情報が読み取れます。神祇官は、朝廷における祭祀を司る重要な役所であり、その運営や財政状況は、当時の政治や社会情勢を反映するものでした。

『仲資王記』には、以下のような内容が記録されています。

神祇官における儀式や祭礼の様子
神祇官の官人たちの日常業務
神祇官の所領における出来事
朝廷や貴族社会の動向
当時の社会情勢や事件

この日記は、神祇官という特定の官庁の活動記録であるため、当時の政治史や社会史だけでなく、宗教史や文化史の研究においても、一次資料として高く評価されています。特に、神祇官の組織構造や運営実態、そして神祇祭祀の具体的な様相を知る上で欠かせない資料です。

また、『仲資王記』は、日記文学としても興味深い側面を持っています。仲資王自身の視点から、当時の社会や出来事が描かれており、その文章表現からは、当時の人々の価値観や生活様式を垣間見ることができます。日記形式であるため、歴史的な事件や社会的な動向だけでなく、仲資王個人の感情や考えも記録されており、歴史的人物に人間味を与える点も魅力の一つです。

研究者たちは、『仲資王記』をさまざまな角度から分析し、平安末期から鎌倉初期にかけての歴史を解明しようと試みています。その内容は多岐にわたり、政治史、社会史、文化史、宗教史の研究に大きく貢献しています。後世に貴重な情報を残した史料として、現在でも研究が続けられています。

参考文献

小田雄三「仲資王記」『日本史大事典 5』（平凡社 1993年） ISBN 978-4-582-13105-5
* 元木泰雄「仲資王記」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年） ISBN 978-4-09-523003-0

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