任昉

任昉の生涯と文学

任昉（じん ぼう、生年460年 - 死去508年）は、南朝において顕著な文学者として名を馳せました。彼は字を彦昇、また「阿堆」としても知られ、故郷は楽安郡博昌県にあります。

任昉は斉の政治家任遙の息子として生まれました。幼少期から量ある知識を持っており、名声を築くのは早かったとされています。16歳の頃、彼は丹陽尹の主簿に抜擢され、その後の道を切り拓いていきました。その後、太常博士や征北行参軍を経て、衛将軍王倹と関わりを持つことになります。彼の才能は高く評価され、詩人沈約とともに「竟陵八友」として文人仲間に迎えられました。

任昉は、斉の中興元年に蕭衍が実権を握ると、より一層の出世を果たしました。彼は新しい政権の中で多くの詔勅を代筆し、重要な役割を与えられました。特に「禅譲の詔勅」に関しては、彼のおかげで成り立ったとされ、彼の能力は高く評価されます。彼の作品、特に散文は斉・梁の時代に多くの表奏を依頼され、彼の名声を不動のものにしました。

しかし、任昉の生涯には困難もありました。父や母の死去に際しては、礼を尽くして喪に服し続け、その間は官職を辞して文人としての生活を送りました。また、蕭鸞に上奏文を代筆する際には、彼の行為を暗に批評し、結果的には明帝の在位中、低い官職に留まることとなりました。彼は明帝の死去後、中書侍郎に転任し、さらに司徒右長史に昇進します。

任昉の交際スタイルは非常にオープンで、多くの友人を大切にし、困っている者には財産を惜しむことなく分け与えました。厳しい経済状況にありながらも、彼は約1万冊の書物を収集し、その知識を広めました。

このように彼の生涯は、文学と友情を大切にしながらも、さまざまな政治的局面に翻弄されています。彼が追贈された太常卿と称される名誉は、彼の業績を物語っています。

作風と評価

任昉の文学に対する評価は、現代においても特別なものです。彼は駢文の技術を駆使し、その作品は当時の文体を代表するものでした。彼の作品は『文選』に多く取り上げられ、彼のスタイルは特異なものでありました。

若いころには詩作が不得意だった任昉ですが、晩年には詩の創作に精進し、独自の詩風を体現しました。彼の詩には多くの典故が用いられ、その博識を反映していましたが、時にはその使い過ぎにより、新しい詩としての独創性に欠けることが指摘されました。実際、評論家の鍾嶸はこの点を批判しています。

それでも、彼の詩風は当時の詩人たちの中でも影響力を持ち、当時の北朝の文壇においても評価されていました。

参考文献

• - 『梁書』巻14
• - 『南史』巻59

もう一度検索