企業局 (通商産業省)

企業局（きぎょうきょく）

企業局は、かつて日本の経済産業行政を担っていた通商産業省（現在の経済産業省）に設置されていた内部部局の一つです。特定の産業分野に特化した縦割りの組織とは異なり、産業全般にわたる横断的な政策や企業の事業活動に関する基盤整備、消費者に関わる経済活動などを広く所管していました。

その役割は多岐にわたり、日本の産業全体の効率化や経営の近代化、円滑な流通、公正な商取引、消費者の保護、そして産業立地の適正化といった、企業の存立と成長、国民生活に直結する様々な課題に対応していました。

この企業局は、昭和48年（1973年）7月に行われた通商産業省の機構改革に伴い、その機能が産業政策局をはじめとする他の部局へ引き継がれる形で廃止されました。その存在した期間において、戦後復興から高度経済成長期にかけての日本の産業構造の変化や企業活動の進展に対応するための重要な役割を果たしました。

組織とその所掌事務

企業局は、以下のような多様な課によって構成され、それぞれが専門的な分野を担当していました。

企業第一課: 企業局全体の事務を調整する役割を担い、事業の合理化促進に関する総合調整や、事業者団体全般の取りまとめを行いました。また、商工会議所や日本商工会議所との連携、そして事業全体の発展、改善、調整に関する総括的な業務を担当しました。
企業第二課: 企業の経理や税制、労働に関する事務を総括しました。さらに、事業の経営管理や生産性の向上といった効率化に関する業務、日本生産性本部との連携なども所掌していました。
産業資金課: 通商産業省が所管する様々な事業活動に必要な資金調達に関する事務を取り扱いました。
外資課: 外国からの投資に関する業務を担当し、外国投資家による技術援助契約の審査や株式等の取得審査を行いました。加えて、外国からの資本流入に関する調査も実施しました。
商務第一課: 物資の流通に関する事務全般を扱い、不正競争の防止を通じて公正な商取引の環境整備に努めました。また、商業全体の発達や改善に関する基本的な政策の策定や、広範な商業活動に関する事務を所管しました。
商務第二課: 特定の商業分野に関する事務を担当しました。具体的には、商品取引所や百貨店業、さらには国内外の博覧会や展示会への参考品の収集、展示、紹介といった業務、そして映画産業に関する事務を扱いました。これらの分野に関連する商品取引所審議会や百貨店審議会といった諮問機関の事務も所掌しました。
消費経済課: 国民生活に直結する消費に関する政策や計画の立案を行いました。家庭用品品質表示法の施行に関する事務、日本消費者協会への指導、消費者への啓蒙活動や教育の推進も重要な業務でした。また、割賦販売や割賦購入あっせんに関する事務も担当し、家庭用品品質表示審議会や割賦販売審議会といった関連審議会の事務も所掌しました。
立地政策課: 工業用地の選定や工場建設に関する事務の総合調整、関連政策や計画の策定を行いました。国土の総合開発に関する事務の総括、工業立地及び工業用水審議会の事務、産業関連施設の整備促進、さらには産業活動に伴う公害対策に関する事務の総括も行いました。その他、産業立地に関する全般的な事務や、物資の運送、保管、保険といった物流に関する総括業務も担当しました。
立地指導課: 工業立地に関する調査や関連資料の収集・保管を行いました。また、工業用地の造成に関する指導や、工業用地の取得あっせん、確保に向けた業務を担当しました。
工業用水課: 工業活動に必要な工業用水に関する事務を専門に扱いました。
* 企業調査課: 産業行政の基礎となる様々な調査を実施しました。物資の価格動向に関する調査や、必要な場合の価格統制に関する事務、そして企業経営の実態に関する調査なども重要な業務として担いました。

これらの多様な課の連携により、企業局は当時の日本経済において、産業活動の基盤整備から消費者保護に至るまで、幅広い分野にわたる横断的な政策を推進する役割を果たしていたのです。

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