伊勢崎市歌

伊勢崎市歌について

「伊勢崎市歌」（いせさきしか）は、群馬県の伊勢崎市で制定された市の歌であり、作詞は下村杜史が、作曲は陸軍戸山学校軍楽隊が手掛け、後に杉山長谷夫によって編曲されました。この市歌は、1940年（昭和15年）に伊勢崎町、殖蓮村、茂呂村という三つの地方が合併して新たに伊勢崎市が誕生した際に、記念として制定されたものです。

この制定当時、伊勢崎市の市制施行の年が皇紀二千六百年と重なっていたため、市はこれを祝いとして捉え、東京朝日新聞（現在の朝日新聞東京本社）の協力を得て、特別な審査委員会を設けました。この審査委員会には、県の役人や地元の教員などが参加し、全国から募った266篇の歌詞の中から入選作品を決定しました。選ばれたのは赤堀村に住む下村杜史（本名：下村敏）で、彼の歌詞が採用されました。その後、陸軍戸山学校に作曲を依頼しましたが、具体的にどの教官が作業を行ったのは明らかではありません。初演奏は1940年11月10日に伊勢崎電気館で行われ、その後テイチクが杉山の編曲により録音したSPレコードも作成されました。

戦後の伊勢崎市歌の扱い

伊勢崎市歌は市制施行直後に制定されたものですが、戦後はその内容が問題視されるようになります。その理由は、歌の中に盛り込まれた皇国史観的な表現が非難され、公的な行事での演奏が行われなくなったことです。特に3番に記載されていた「興亜の御代の朝ぼらけ」という歌詞が議論の的となりました。

1990年（平成2年）に市制施行から50周年を迎えるにあたり、伊勢崎市では新たな市民歌が策定されることとなり、椎名恵が歌唱する「歩いてみたい」が選ばれ、正式に市の行事で演奏されるようになりました。この新しい歌の作詞は石田幸江が手がけ、作曲は小林聡、編曲は樫原伸彦が担当しました。


その後、伊勢崎市、赤堀町、東村、境町の合併協議では、他の町村が町歌を制定していなかったため、元々の「伊勢崎市歌」をどう扱うかが焦点となりました。市側は、1920年に制定された市歌の扱いについて明確な姿勢を示すことができず、「新市において市歌を作成する」という結論が出されました。結果として、2005年1月1日には新しい伊勢崎市発足と同時に、旧市歌は失効・廃止されました。しかしながら、市民歌「歩いてみたい」は合併協議会の確認対象には含まれず、それにより今も新市の行事で演奏されることがある一方で、オリジナルダンス「ダンピアいせさき」にもその旋律の一部が使われています。


さらに、2024年（令和6年）には新市20周年を記念して公認テーマソングが制定される予定で、バンドLACCO TOWERの新曲「綾」がその役割を担うこととなります。

まとめ

伊勢崎市歌の歴史を通して、地域に根付いた文化・歴史の影響を感じることができます。特に戦後の価値観の変化によって、どのように市歌が受け入れられ、改訂されてきたのかという過程は、地域コミュニティの在り方や市民の意識にも関わる重要な側面です。今後、新設される市民歌が市民にどのように受け入れられ、愛されていくのかが注目されるでしょう。

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