皇国史観

皇国史観についての考察

皇国史観は、日本の歴史を万世一系の天皇を中心に据える視点から捉える考え方です。この思想はさまざまな解釈が存在し、歴史学や政治の影響を受けて形成されてきました。特に、国の基盤として天皇を位置づけ、超国家主義的な要素を含むことが特徴です。

皇国史観の定義

皇国史観は、日本の歴史を「万世一系の天皇による国家統治」を特色とする視点で理解し、古事記や日本書紀に記された神話を歴史的事実として受け入れる特徴があります。これに関して、デジタル大辞泉では、万世一系の天皇を中心に国体の発展を捉える歴史観と定義しています。一方、日本大百科全書では天皇中心の超国家主義的な日本史観として位置づけています。このような見解のもと、皇国史観は日本における教育や文化にも深く影響を与えてきました。

起源と歴史的背景

皇国史観の起源は、幕末の尊攘思想や平田国学、明治の国粋主義にまで遡ります。特に、平泉による「万世一系」の強調が、近代日本の歴史観に多大な影響を与えたことが指摘されています。皇国史観は、唯物史観に対する危機感を背景に、新たな歴史の解釈を生むこととなりました。

南北朝時代から江戸時代

南北朝時代では、北畠親房が著した『神皇正統記』が皇国史観の先駆けとなります。江戸時代には水戸学や国学が発展し、幕末には尊皇攘夷運動が盛り上がります。明治維新後、政府は水戸学の影響を受けて皇国史観を公式な歴史観として定め、1889年の大日本帝国憲法においても、万世一系の神聖な天皇による統治が明記されました。

教育と皇国史観の問題

1880年代には比較的自由な歴史議論が行われましたが、1891年には神道に関する批判が不敬罪として非難され、知識人が職を追われる出来事がありました。その後、大正デモクラシーの時代において左翼系の唯物史観が登場し、歴史学に新たな流れを加えましたが、社会的統制も一層強まることとなりました。特に、1935年の天皇機関説事件や1940年の神話への批判問題が起きることで、皇国史観に反対する学説の発表が困難になっていきました。

戦後の変化と批判

第二次世界大戦後、連合国による占領下で日本国憲法が施行され、国民主権が明記されると共に、マルクス主義思想も広まりました。このような変化の中で、皇国史観は国家政策の一環と見なされるようになり、学問的には虚偽に基づく体系であると批判されました。特に、本郷和人は皇国史観を空論として捉え、歴史的事実を無視した大きな物語の創作であると指摘しています。

結論

皇国史観は、日本の歴史観の中で独自の位置を占めていますが、その特性や影響については賛否が分かれます。歴史教育や国家政策としての役割において、今後もその考え方がどのように変化していくのかが注目されるところです。

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