伊勢津彦

伊勢津彦神について

伊勢津彦神（いせつひこのかみ）は、日本の神話において重要な位置を占める神であり、風の神としても知られています。彼は『伊勢国風土記』や他の古典文献に多様な名前で登場し、その神名は多くの由来を持っています。

概説

『伊勢国風土記』の逸文では、彼は伊勢津彦神、伊勢都彦命、出雲建子命、天櫛玉命、櫛玉命などとして知られています。地名や神名の使用方法により多様な名称が見受けられますが、国号の由来と関係が深いため、ここでは主要な名である「伊勢津彦神」に統一して記述します。彼は国津神として記録され、風の神とされることから、自然の力とも関わりを持つ存在とされています。

『新撰姓氏録』では櫛玉命、天櫛玉命の名称も用いられ、彼は高御魂命（高魂命）の子として描かれています。一方、『先代旧事本紀』天神本紀では天櫛玉命として登場し、饒速日命の防護を担当する神として位置づけられます。

国号の由来

伊勢津彦神は、天日別命によって国土を譲ることを要求された際、先住者として最初はこれを拒否しました。彼が長い間その地に住んでいたため、自らの権利を主張したのです。しかし、天日別命の攻勢を恐れ、最終的には東方へ去る決断をします。この際、証明として強風を起こし、波に乗って去ることを誓いました。この逸話は、伊勢国が命名される過程を示していて、あらゆる神話の中に多くの興味深い要素を含んでいます。

後に、天皇の命令によって国名として伊勢が定められることになり、彼の逸話は後世にわたって多くの人々に語り継がれることとなります。

別伝

出雲神の子である出雲建子命の別名が伊勢都彦命（伊勢津彦神）であり、この名は他の文献でも言及されています。例えば、阿倍志彦の神が城を奪う試みをした際、それに敗れたことから「伊勢」という名が誕生したとの記述も存在し、名称の由来には多様な解釈があるのです。

考証

伊勢津彦神に関する神話の解釈は多岐にわたります。本居宣長は、彼が建御名方神の別名であり、神武天皇時代の記述は後世の誤伝だと述べています。この説は、神津神に対する反抗と逃避の物語が似ていることから来ていると言われています。他方、伴信友は、伊勢津彦神から建御名方神へと続く系譜を考察し、これらの神々を異なる存在として分類しています。

また、宝賀寿男によると、伊勢津彦神に関する記述から、彼は本来別の神であり、混乱が発生した理由を神武天皇の東征に求めています。

伊勢津彦神を祀る神社

伊勢津彦神は、さまざまな神社で奉納されていますが、いくつかの神社では今もその名が残されています。主なものには、長野県の『伊豆毛神社』や『風間神社』があり、三重県の『都美恵神社』も挙げられます。これらの神社は、彼の信仰の象徴ともいえる重要な場です。

このように、伊勢津彦神は日本の神話における多層的な存在であり、その物語は風の神としての役割だけでなく、国土の形成や歴史的な背景とも深く結びついています。

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