伊勢貞遠

伊勢貞遠は、室町時代後期から戦国時代にかけて生きた人物であり、伊勢貞房の長男として生まれました。彼は同族である伊勢貞宗（下総守・貞牧の子）の猶子となり、その庇護を受けました。

足利義稙（義材）に仕えた貞遠は、当時の宮中における儀式やしきたり、故実に関する記録を『殿中申次記』としてまとめました。この書物は、当時の社会や文化を理解する上で貴重な資料であり、『群書類従』に収録されています。

『北野社家日記』には、延徳3年（1491年）に今川龍王丸のもとにいた同族の伊勢盛時に対し、便宜を図るための書状を送ったという記述があります。このことから、貞遠が同族との連携を重視し、積極的に支援していたことが伺えます。

また、永正13年（1516年）には、裏打直垂を許されて出仕する幕臣の中に貞遠の名前が見られます。これは、彼が幕府において一定の地位を確立し、重要な役割を担っていたことを示唆しています。

このように、伊勢貞遠は室町時代から戦国時代にかけて、幕府に仕えながら故実の研究や記録に尽力し、同族との連携も大切にする人物でした。彼の残した『殿中申次記』は、今日においても貴重な歴史資料として評価されています。

参考資料
『寛政重脩諸家譜 第三輯』國民圖書、1923年2月23日。
小久保嘉紀「斯波氏と室町幕府儀礼秩序―書札礼を中心に―」『愛知県史研究』第2010巻第14号、2010年、1-14頁、doi:10.24707/aichikenshikenkyu.14.0_1。
* 大日本古文書　家わけ第二十二　益田家文書之四 - 東京大学史料編纂所 | Historiographical Institute The University of Tokyo

もう一度検索