伊原敏郎

伊原敏郎（伊原青々園）

伊原敏郎（いはら としろう、1870年5月24日 - 1941年7月26日）は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した日本の演劇評論家、劇作家です。筆名である青々園（せいせいえん）の名でも広く知られています。

生涯

島根県松江市に、旧松江藩士の子として生まれました。第一高等学校を中退後、1893年に二六新報に入社し、青々園の筆名で劇評を書き始めました。この頃、坪内逍遥と親交を深めます。

1896年には都新聞へ移籍。1900年には三木竹二と共に演劇雑誌『歌舞伎』を創刊し、演劇研究の分野で大きな足跡を残しました。

特に、『日本演劇史』『近世日本演劇史』『明治演劇史』の三部作は、彼の代表作として知られ、1933年に朝日文化賞を受賞しました。さらに、これらの業績が認められ、1936年には早稲田大学から文学博士号を授与されました。

演劇評論の分野での活動に加え、新聞小説や戯曲の執筆も行い、戯曲『出雲の阿国』などの作品を残しています。

1941年（昭和16年）7月26日、咽頭がんのため神田区旅籠町の神尾病院で逝去。享年72歳でした。告別式は7月28日に青山葬儀所にて執り行われ、墓所は青山霊園にあります。

著書（一部）

伊原敏郎は、演劇史研究に関する著作のほか、小説や戯曲など、多岐にわたるジャンルの作品を執筆しました。以下に、主な著書を挙げます（絶版、復刻版を含む）。

『欝金しごき』探偵實話 （金槇堂、1901年）
『自轉車お玉』探偵實話 （金槇堂、1901年）
『新比翼塚 吉原心中』（金槇堂、1900–01年）
『市川團十郎』（エックス倶樂部、1902年）
『強盜士官』探偵實話（金槇堂、1902年）
『爲朝重太郎』實事小説』（駸々堂、1902年）
『三升格子』（金槇堂、1902年）
『日本刀』（駸々堂、1903年）
『後の爲朝』（駸々堂、1902–03年）
『日本演劇史』（早稻田大學出版部、1904年）
『影法師』（春陽堂、1906年）
『戀の闇』（近藤新榮堂、1906年）
『唾玉集』後藤宙外共編（春陽堂、1906年、のち平凡社東洋文庫）
『夫さだめ』（春陽堂、1907年）
『子煩惱　戀の闇續編』（近藤新鋭堂、1907年）
『新朝顏日記 春陽堂、1907年）
『寶息子』（春陽堂、1908年）
『若狹物語』（春陽堂、1908年）
『縁の絲 新講話』（畫報社、1909年）
『出雲の阿國』（同文館、1910年）
『新桂川』（畫報社、1909–11年）
『房州義民傳』（岡村書店、1911年）
『人と人』（新鋭堂、1911–12年）
『迷ひ子』（樋口隆文館、1911年）
『大將の家』（春陽堂、1913年）
『近世日本演劇史』（早稻田大學出版部、1913年）
『火の玉小僧』（大川屋書店、1915年）
『市川團十郎の代々』（市川宗家、1917年）
『後の強盜士官』（大川屋書店、1919年）
『舞臺之團十郎』 安部豊共編（舞臺之團十郎刊行會、1923年）
『白魚河岸』（新作社、1924年）
『現代大衆文學全集』 第25卷、伊原集（平凡社、1929年）
『歌舞伎通』（四六書院、1930年）
『明治演劇史』（早稻田大學出版部、1933年）
『演劇談義 隨筆集』（岡倉書房、1934年）
『團十郎の芝居』（早稻田大學出版部、1934年）
『團菊以後 正･續』（相模書房、1937年）
『伊原集』歌舞伎座劇評集、昭和2年1月〜昭和16年2月（坂上書院、1941年）
* 『歌舞伎年表』全8卷（岩波書店、1956–63年）


伊原敏郎は、演劇研究における先駆者の一人として、日本の演劇史研究に多大な貢献を果たしました。その業績は、今日においても高く評価されています。

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