伊東里き

伊東里き: 北米移住の先駆者

伊東里き（いとう りき、1865年-1950年）は、明治末期から昭和初期にかけて北アメリカへの移住を積極的に推進した日本人女性である。三重県の志摩市にある片田村出身で、アメリカで助産師の資格を取得した初めての日本人とされる。彼女の熱心な働きかけにより、片田村は「アメリカ村」と称され、多くの村人がアメリカへ渡った。

来歴とアメリカとの出会い

伊東里きは、1865年に医師の伊東雲鱗の子として誕生。幼少より教育熱心な環境で育ち、1895年に初めてアメリカを訪れることとなった。当初、東京で兄の世話をしながら生活していた彼女は、横浜でアメリカ人との接触を経験し、その後の人生における大きな転機を迎えることになる。

まず、1887年からはアメリカ人の家庭でメイドとして働き始め、1889年には海軍大尉の家族と共にアメリカに渡ることに決める。この旅は、彼女の人生を大きく変える出来事となった。アメリカでは地元男性と結婚し、娘モヨを出産するが、後に夫が亡くなり、再び別の男性と生活を共にすることになった。

渡米と帰国

1894年に帰国した際、里きはアメリカで学んださまざまな知識を村に持ち帰り、特にアメリカの労働環境や賃金の高さについて村人に詳しく説明した。この影響により、片田村からアメリカへ移住を希望する人々が急増し、村は「アメリカ村」として知られるようになる。この時期、里きは移住希望者の渡航費を全額負担し、友人や知人を助けた。

娘モヨとの別れ

里きは娘モヨを日本に預けた後もアメリカに留まり、サンフランシスコでさまざまな仕事に従事しましたが、モヨとの別れは心に重くのしかかりました。モヨは加藤夫妻に育てられ、成長する中で多くの試練に直面しましたが、母を思いやり、立派な女性に成長しました。

移民ブームの先駆け

1895年に、里きはサンフランシスコの中華街で日本画を販売し、その収入で多くの移住者を支援しました。彼女の成功と彼女が提案した労働条件の高さは、村人にとってまるで夢のように映り、多くの人々がアメリカ行きを決意する要因となりました。これによって片田村からの移住者が急増し、日系移民社会の形成が進んだのです。

苦難の時代

しかし、アメリカでの生活は決して楽なものばかりではありませんでした。里きは様々な職業に転職し、労働環境や人種差別に苦しむことも少なくありませんでした。それにもかかわらず、彼女は日本人助産師の第1号として認可を受け、女性としての地位を確立することに成功しました。

晩年と遺産

1950年、里きはアメリカで生涯を閉じました。帰国時に持ち帰った「おりきの松」と呼ばれる木は、現在も三重県に残され、彼女の功績を物語っています。彼女の生き方は、単なる移民の枠を超え、日米関係の歴史に残る重要な人物として位置づけられています。彼女の子孫は今もアメリカで生活しており、母国との絆を強く持ち続けています。

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