伊藤嘉余子

伊藤 嘉余子

1975年、愛知県に生まれる。日本の福祉学者として、特に子ども家庭福祉および社会的養護の分野で顕著な活動を展開している。現在は大阪公立大学人間社会学域教育福祉系部門の教授を務める。

同志社大学文学部社会学科にて社会福祉学を専攻し、1999年に卒業。その後、同大学院文学研究科博士前期課程を2001年に修了。さらに学びを深め、2007年には日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程を修了し、博士（社会福祉学）の学位を取得した。博士論文のテーマは「児童養護施設におけるレジデンシャルワークの展開に関する研究 施設職員の職場環境に焦点をあてて」であり、この頃から児童養護施設における支援のあり方、特に職員の環境整備に深い関心を寄せていたことがうかがえる。

大学院修了後、研究者としてのキャリアをスタートさせる。福島学院大学での講師職を経て、2006年には埼玉大学教育学部乳幼児教育講座の講師に就任。同講座で2009年に准教授に昇任した。その後、2012年に大阪府立大学教育福祉学類へ移り、准教授として教育・研究に携わる。2017年には同大学の教授に昇任。そして、大学統合に伴い、2022年より大阪公立大学の教授として現在に至る。教育者として次世代の福祉専門職の育成にも力を注いでいる。

専門は社会福祉学、特に児童養護、子ども家庭福祉、社会的養護といった分野に焦点を当てている。社会福祉士および保育士の資格を有しており、その研究は机上の理論に留まらず、現場の実践に基づいたものであることが特徴である。児童養護施設における職員の働き方や、社会的養護を必要とする子どもの養育環境の質の向上を目指した研究活動を精力的に行っている。

学術研究活動に加え、社会活動にも積極的に関与している。特に、子どもの虐待防止や権利擁護を目指すNPO法人CAPセンター・JAPANでは、2022年から理事長を務めている。また、日本のこの分野における主要な学会である日本子ども家庭福祉学会では、2023年から会長を務めるなど、国内の子ども家庭福祉研究の発展と普及にも大きく貢献している。その他にも、NPO法人日本こども支援協会、NPO法人子どもデザイン教室、NPO法人GivingTreeといった複数のNPO法人の理事としても活動しており、社会的な課題解決に向けた実践的な取り組みにも尽力している。

これまでの研究成果は多数の著作として発表されている。単著として、博士論文を基にした『児童養護施設におけるレジデンシャルワーク 施設職員の職場環境とストレス』（明石書店）がある。また、多くの共編著に携わっており、特に『社会的養護の内容』『子ども家庭福祉』『家庭支援論』『社会的養護』『子どもを支える家庭養護のための里親ソーシャルワーク』（いずれもミネルヴァ書房「MINERVAはじめて学ぶ子どもの福祉」シリーズ）や、『児童福祉 子ども家庭福祉と保育者』『社会福祉援助技術 保育者としての家族支援』（樹村房「保育・教育実践テキストシリーズ」）など、社会的養護や子ども家庭福祉に関する教科書・専門書が多い。これらの著作は、この分野を学ぶ学生や実務家にとって重要な参考文献となっている。さらに、ジョン・E.B. マイヤーズの著書『アメリカの子ども保護の歴史』の共訳も手掛けており、海外の知見を国内に紹介する役割も担っている。

伊藤嘉余子氏の研究と実践は、社会的養護を必要とする子どもたちがより良い環境で成長できるよう、学術的知見と現場のニーズを結びつけ、その質の向上に多角的な視点から貢献していると言える。

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