伊藤愛里

伊藤 愛里（いとう あいり）

1989年7月5日、愛媛県松山市に生まれた伊藤愛里は、日本の元陸上競技選手です。専門は100メートルハードルで、自己ベストは13秒27を記録し、これは西日本学生記録としても残っています。学生時代から国内外の大会で活躍し、社会人としては住友電工に所属しました。

幼少期から陸上競技へ

松山市で育ち、B型の血液型を持つ伊藤選手は、幼い頃からバスケットボールやドッジボールといった球技に親しんでいました。小学生時代には既に足が速く、バスケの試合ではドリブルで相手を置き去りにし、運動会ではリレーで最後尾から驚異的な追い上げを見せたエピソードも残されています。また、水泳、ソロバン、習字、日本舞踊など、様々な習い事も経験しました。

松山市立西中学校に進学する際、当初はテニスウェアの可愛らしさに惹かれてテニス部への入部を考えていました。しかし、部活動見学で陸上部を訪れた際に、先輩から飴をもらったことがきっかけで、陸上部に入部することを決めます。入部当初は100メートル、1500メートル、走幅跳など複数の種目に挑戦していましたが、ハードルを美しく跳ぶ他校の先輩選手の姿に感銘を受け、1年次の秋から100メートルハードルに専念するようになりました。初めて走った100メートルジュニアハードルでは17秒17の記録でしたが、3年次には四国大会への出場を果たします。当時の実力は「予選落ちレベル」だったと本人は語りますが、自宅から近い済美高校の練習に参加させてもらった成果もあり、四国大会では6位に入賞しました。中学時代に全国大会を経験することはなく、これが中学最高の成績となりました。

高校・大学での成長と飛躍

高校は、練習に参加したことや自宅からの通いやすさもあり、済美高校に進学します。中学校が必ずしも陸上強豪校ではなかったため、高校で本格的に陸上競技の基礎技術を習得すると、1年次からインターハイや国民体育大会といった全国規模の大会を経験するようになります。2年次にはインターハイで4位入賞を果たすなど順調に成長していましたが、その年の冬から度重なる故障に見舞われます。3年次には腰痛の影響もありインターハイでは準決勝敗退となり、日本ジュニア選手権でも5位にとどまり、2年次にマークした自己ベスト14秒13を更新することはできませんでした。

大学は地元愛媛を離れ、大阪にある関西大学に進学します。当初は大学職員を志望しており、陸上競技よりも学業を優先することも考えていた時期がありました。また、高校時代に続き腰痛にも悩まされ、1年次には期待するような結果が得られませんでした。しかし、2009年には3年間更新が叶わなかった高校時代の自己記録を上回り、初の13秒台に突入するとともに、関西インカレで優勝を果たし、大学タイトルを初めて獲得します。2010年には、5月の関西インカレで15年ぶりに関西学生記録を更新する13秒57をマークして2連覇を達成。9月の日本インカレでは自身の持つ関西学生記録をさらに塗り替える13秒50を記録しましたが、当時の日本歴代9位となる好記録をマークした選手に競り負け、初の全国制覇はなりませんでした。2011年には、4月の織田記念国際予選で13秒30を記録し、西日本学生記録・関西学生記録を更新（ともに当時）。決勝でも13秒33と、2ラウンド連続で13秒3台をマークして2位に入ります。その勢いは止まらず、5月の関西インカレでは、当時の日本歴代10位、日本学生歴代2位、そして西日本学生記録・関西学生記録となる13秒27をマークし、当時の日本学生記録に肉薄するタイムで大会3連覇を達成しました。6月の日本選手権では初めて表彰台（2位）に上がり、7月のアジア選手権では初めて日本代表として日の丸を背負い8位、8月のユニバーシアードでは初めて世界レベルの舞台を経験し準決勝に進出しました。そして9月の日本インカレでは初の全国タイトルとなる優勝を飾るなど、大学最終年に集大成となる活躍を見せました。

社会人での挑戦と引退

大学で就職活動を始めた頃は、陸上競技は大学で終えることも考えていたそうですが、卒業後は住友電工に入社し、競技を続行することを決めます。社会人1年目となる2012年9月の全日本実業団選手権では、強豪選手を退け優勝を果たし、社会人として初めての全国タイトルを手に入れました。その後、2014年まで同大会で3連覇を達成する快挙を成し遂げます。2013年6月の日本選手権では、自己ベストに並ぶ13秒27をマークしましたが、世界選手権参加標準記録を突破した他の選手たちに及ばず3位となりました。同年10月の東アジア大会では途中棄権に終わったものの、住友電工陸上競技部の創設以来、初めて日本代表として国際大会に出場した選手となり、部の歴史に新たな一歩を刻みました。2014年6月の日本選手権では、優勝には及ばなかったものの、2011年大会に並ぶ過去最高順位タイとなる2位に入り、10月の国民体育大会では強豪選手にわずか0秒02差で競り勝ち、自身初の国体優勝を果たしました。2015年9月の全日本実業団選手権では惜しくも4連覇は逃しましたが、10月の国民体育大会では自己ベストに迫る記録で2連覇を達成しました。大会後、腰に違和感を抱えながらも、2年後の地元愛媛での国体まで現役を続行することを決意します。

そして、2017年、故郷愛媛県で開催された国民体育大会を現役最後の大会と定めました。開会式では女子選手を代表して選手宣誓の大役を果たしました。腰に複数の骨折を抱えるなど、決して万全とは言えないコンディションでの出場となりましたが、100メートルハードル予選に臨みます。結果は予選敗退となりましたが、レース後、その場で競技人生に区切りをつけ、現役引退を表明しました。度重なる怪我とも戦いながら、地元開催の国体で引退という有終の美を飾る形となりました。

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