伊藤敬一 (囲碁)

伊藤敬一（いとう けいいち、1928年2月27日 - 1992年7月22日）は、昭和期の囲碁ライターであり、筆名を「うえだひろし」として活動しました。兵庫県に生まれ、囲碁の世界に足を踏み入れ、その魅力を文章で伝えました。

中央大学法学部在学中には囲碁部に所属し、日本棋院に出入りする中で、囲碁ライターとしての道を志すようになります。1951年に大学を卒業後、1953年にプロの囲碁ライターとしてのキャリアをスタートさせました。

伊藤敬一は、雑誌「棋道」や「囲碁クラブ」などに連載を持ち、囲碁に関する様々なテーマで執筆活動を行いました。特に、十段戦や新人王戦といった主要な棋戦の担当として、「週刊碁」や「レッツ碁」に観戦記を執筆し、その詳細な描写と分かりやすい解説で多くの読者を魅了しました。対局の臨場感や棋士の心理を鮮やかに描き出す彼の文章は、囲碁ファンにとって貴重な情報源であり、楽しみの一つでした。

また、伊藤敬一は数多くの著作も残しています。その中でも特筆すべきは、以下の作品群です。

日本囲碁大系 第12巻 元美・俊哲・仙得: 中国の古典的な囲碁に関する研究書である「日本囲碁大系」において、伊藤敬一は第12巻を担当し、元美、俊哲、仙得といった著名な棋士について執筆しました。筑摩書房から1976年に出版され、囲碁史研究に貢献しました。
碁楽室: 1982年に日本棋院から出版された「碁楽室」は、うえだひろし名義で著されたエッセイ集です。囲碁に関する様々な話題を軽妙な筆致で綴り、囲碁の奥深さや面白さを伝えています。
現代囲碁大系46 女流珠玉選1: 講談社から1983年に出版された「現代囲碁大系」の第46巻では、女流棋士の対局を取り上げ、その魅力を紹介しました。
囲碁・名人名局の譜 : 盤上に賭けた棋士たちの奇手・名手を説く: 1987年に日本文芸社から出版されたこの書籍では、囲碁史に残る名局を解説し、棋士たちの戦略や心理を描き出しました。
* 昭和囲碁名勝負物語 上下: 伊藤敬一の没後、1994年に三一書房から出版された「昭和囲碁名勝負物語」は、昭和時代の名勝負を振り返る書籍です。上下巻にわたり、数々の名局を詳細に解説し、当時の囲碁界の熱気を伝えています。

伊藤敬一は、囲碁ライターとして、観戦記の執筆や著作活動を通じて、囲碁の普及と発展に大きく貢献しました。彼の文章は、囲碁のルールや戦略だけでなく、棋士たちの人間ドラマや囲碁の持つ文化的な側面も伝えており、多くの読者に囲碁の魅力を再発見させました。彼の業績は、日本の囲碁文化において重要な位置を占めています。

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