伊藤益

伊藤益：日本の倫理思想を深く探求する哲学者

伊藤益氏は、1955年京都市生まれの哲学者です。筑波大学名誉教授の職に就き、日本倫理思想を専門とする第一人者として知られています。その研究は、古代日本人の政治思想、言語観、そして倫理観に焦点を当て、日本文化の根底にある精神世界を深く探求しています。

伊藤氏の学問的基盤は、筑波大学大学院哲学・思想研究科倫理学専攻での研鑽に裏打ちされています。同大学院を修了後、文学博士号を取得。「国家と個人の問題に関する倫理学的研究―古代日本人の政治思想と言語観および倫理観をめぐって―」と題された博士論文は、彼の研究姿勢の端緒を示すものです。

彼の学問的業績は、単なる学術研究にとどまりません。数々の著書が、一般読者にも日本の倫理思想への理解を深める機会を提供しています。代表的な著書として、『ことばと時間 -古代日本人の思想-』、『日本人の知 -日本的知の特性-』、『日本人の愛 -悲恋の思想-』などがあります。これらの著作は、日本人の精神構造や歴史的文脈を踏まえながら、現代社会における倫理的な問いを提起しています。

特に注目すべきは、1990年から1992年度にかけて和辻哲郎賞を受賞した『ことばと時間 -古代日本人の思想-』です。この著作は、古代日本人の思考様式や言語表現の特徴を分析し、日本文化の独自性を浮き彫りにしています。和辻哲郎賞受賞は、彼の研究の質の高さと学界における高い評価を示しています。

伊藤氏の研究活動は、大学での教育活動にも反映されています。筑波大学において長年教授を務め、多くの学生に倫理思想を教授しました。その教育活動は、将来の研究者や社会の指導者育成に貢献していると言えるでしょう。

さらに、伊藤氏の研究は、単に過去の思想の解釈にとどまらず、現代社会の課題への示唆を与えています。例えば、近年の著作『鬱を生きる思想』、『自由論 -倫理学講義-』などは、現代社会が抱える精神的な問題や自由の概念について、哲学的な視点から考察しています。

伊藤氏は、国文学者であり筑波大学名誉教授である伊藤博氏を父に持ちます。学問的な家系に育ち、その影響も彼の研究人生に少なからず影響を与えていると考えられます。

彼の研究は、学術的な深みと、同時に一般読者への高い親和性を持ち合わせています。日本の倫理思想に関心のある者にとって、伊藤益氏の著作は必読と言えるでしょう。今後も、日本の倫理思想の発展に貢献する活動を期待したいところです。

主な著書一覧

『ことばと時間 -古代日本人の思想-』（大和書房）
『日本人の知 -日本的知の特性-』（北樹出版）
『日本人の愛 -悲恋の思想-』（北樹出版）
『「信」の思想 -親鸞とアウグスティヌス-』（北樹出版）
『日本人の死 -日本的死生観への視角-』（北樹出版）
『旅の思想 -日本思想における「存在」の問題-』（北樹出版）
『親鸞 -悪の思想-』（集英社新書）
『高橋和己作品論 -自己否定の思想-』（北樹出版）
『歎異抄論究』（北樹出版）
『愛と死の哲学 -田辺元-』（北樹出版）
『危機の神話か神話の危機か -古代文芸の思想-』（筑波大学出版会）
『鬱を生きる思想』（北樹出版）
『自由論 -倫理学講義-』（北樹出版）
『私釈親鸞』（北樹出版）
『私釈法然』（北樹出版）
『念仏者 蜂屋賢喜代』（北樹出版）
『歎異鈔講話』校訂（著者・蜂屋賢喜代、北樹出版）
『日本思想の論理』（北樹出版）

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