伊藤秀三

伊藤 秀三（いとう しゅうぞう）

日本の生態学者。長崎大学名誉教授。専門は植物生態学。

1932年に広島県竹原市で生まれた伊藤秀三は、日本の生態学分野、特に植物生態学において顕著な業績を残した研究者である。長崎大学で教鞭をとり、名誉教授の称号を授与された。

経歴

広島大学理学部生物学科を1955年に卒業後、同大学院理学研究科に進み、課程を修了して理学博士の学位を取得した。日本自然保護協会の研究員などを経て、1970年に長崎大学教養部教授に着任。その後、同大学環境科学部教授を務め、1998年の退官時に長崎大学名誉教授となった。

研究活動

伊藤氏の研究活動は、主に島嶼部の植生調査に焦点を当てていた。国内では長崎県の離島、海外ではハワイ諸島、小笠原諸島、そして特にガラパゴス諸島で精力的なフィールド調査を行った。ガラパゴス諸島については、1964年という早い時期から関わりを持ち始め、その後も継続的に訪問し、実に7度にわたる学術調査を実施した。この長年にわたる現地での詳細な研究成果は、ガラパゴス諸島の生態系、特に植物相の理解に大きく貢献し、彼をガラパゴス研究における日本を代表する第一人者という評価へと導いた。

社会活動と受賞

学術研究に加え、関連する多くの学会や団体の役職を歴任し、自然保護や科学啓蒙活動にも尽力した。日本ガラパゴスの会会長として、同諸島の保全や研究交流を推進したほか、チャールズ・ダーウィン財団の評議員、日本巨樹巨木林の会会長なども務めた。これらの貢献が認められ、2001年には自然環境功労者として環境大臣表彰を受賞。さらに、2014年には瑞宝中綬章を受章し、多年にわたる公務への功績が称えられた。

著書・訳書

研究成果や知見は多くの著書や訳書として発表され、専門家のみならず広く一般の読者にも影響を与えた。代表的な著書には、植生学に関する専門書『群落の組成と構造』（編著、朝倉書店、1977年）や、自身のライフワークであるガラパゴス研究の集大成ともいえる『新版・ガラパゴス諸島－「進化論」のふるさと』（中公新書、1983年）、『ガラパゴス諸島－生きものたちの進化と生態』（岩波書店、1985年）などがある。また、長崎県の自然を紹介する『長崎県の無人島－その自然と生物』（共編、長崎県自然保護協会、1993年）や、島嶼生態学の視点から植物の進化と生態を解説した『島の植物誌－進化と生態の謎』（講談社、1994年）も広く読まれた。訳書としては、『島の生命』（ジョン・スパークス著、講談社、1977年）などがある。

死去

2025年5月6日、93歳で死去した。長崎大学付属図書館には、伊藤氏が旧蔵していたガラパゴス諸島の貴重な写真コレクションをもとに構築された画像データベースがあり、彼の研究の軌跡を今に伝えている。

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