伊藤英昌

伊藤 英昌（いとう ひでまさ）

日本の造園分野に多大な貢献をした建設官僚、技術者。1943年5月5日、千葉県に生まれた。

経歴と建設省での歩み

東京大学農学部農業生物学科で学び、1967年に卒業。同年、建設省に入省し、国家公務員としてのキャリアをスタートさせた。

建設省では主に都市局に勤務し、都市の緑化や公園整備に関わる重要なポストを歴任した。1980年代半ばには、都市局都市計画課において建設専門官を務め、都市における緑地の計画や整備に関する専門的な知識と実務能力を発揮した。この頃は、高度経済成長を経た都市環境の改善が求められる時期であり、伊藤氏は都市計画の観点から緑地が果たすべき役割の重要性を認識し、その実現に向けた取り組みを進めた。

1990年代に入ると、さらに責任ある立場へと昇進。1996年には都市局公園緑地課長に就任し、国全体の公園・緑地行政を統括する立場となった。公園緑地課長としては、都市公園法に基づく公園整備の推進、自然公園の保全・整備、緑化推進に係る施策の企画・実施など、幅広い業務を指揮。日本の国土における緑の空間の質的・量的向上に深く関与した。

公園緑地課長を務めた後、建設大臣官房審議官という要職に就き、省全体の重要政策の企画・立案に参画した。また、都市基盤整備公団（後の都市再生機構の一部）においては理事を務め、都市の再開発や緑地整備といった大規模な都市基盤整備事業の実務を推進する役割を担った。これらの役職を通じて、行政の中枢から日本の都市環境、特に緑地環境の整備・向上に尽力した。

受賞と栄典

長年にわたる造園行政への貢献は高く評価されており、2001年には第23回日本公園緑地協会北村賞を受賞した。この賞は、日本の公園緑地行政や造園分野に顕著な功績のあった個人や団体に贈られる権威ある賞である。

また、国家公務員としての功績及び退官後の社会への貢献が認められ、2015年には瑞宝中綬章を受章した。これは、公共的な職務に長年従事し、功績を挙げた者に授与される日本の勲章の一つであり、伊藤氏のキャリア全体の集大成とも言える栄誉であった。

退官後の活動

建設省を退官した後も、伊藤氏は造園分野および関連する公共的な活動に情熱を注ぎ続けた。特に、造園関連の主要団体の要職を歴任し、後進の指導や業界全体の発展に貢献した。

2015年頃には公益財団法人日本公園緑地協会の会長を務め、公園の利用促進や質の向上、緑化思想の普及啓発に努めた。さらに、2016年から2018年にかけては、一般社団法人日本造園修景協会の第8代会長として、造園技術の向上や、公共空間における修景事業の振興に指導的な役割を果たした。このほか、公益社団法人日本造園学会では副会長や理事を務めるなど、学術研究と実務を結びつけ、造園学の発展と普及にも貢献した。

著作

自身の専門知識と実務経験に基づき、執筆活動も行った。1994年には、公共空間における芝生の重要性や管理方法に焦点を当てた専門書『公共緑地の芝生: アメニティターフをめざして』（ソフトサイエンス社）を共著で上梓している。これは、都市公園をはじめとする公共緑地における芝生の適切な整備・維持管理の指針となる著作として、造園実務家や研究者にとって価値ある一冊となっている。

伊藤英昌氏は、日本の造園系建設官僚として、キャリアを通じて一貫して国土の緑化、都市の緑地環境向上に尽力した人物である。その貢献は、建設省での政策形成・実施から、退官後の業界団体での活動、そして専門書の執筆に至るまで多岐にわたる。日本の緑豊かな景観や快適な都市空間の形成において、その業績は今日まで受け継がれていると言える。

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