伊賀上野地震

伊賀上野地震（いがうえのじしん）

伊賀上野地震は、1854年7月9日（嘉永7年6月15日）午前2時頃に、三重県伊賀市北部で発生した地震です。これは活断層による内陸直下型の地震と考えられています。発生時期は「安政」への改元の前ですが、歴史的な年表では嘉永7年1月1日から安政元年とされ、安政伊賀地震とも呼ばれています。伊賀上野地震は、その後の飛越地震を含む一連の地震と共に、安政年間に起きた著しい被害地震として「安政の大地震」と総称されます。

概要

前震

地震の前兆として、1854年7月7日（嘉永7年6月13日）正午に前震が発生しました。この前震では建物に被害はありませんでしたが、住民は不安から外で寝たりして過ごしました。

本震

本震が発生したのは同年7月9日の午前2時頃で、震央の位置は北緯34.75度、東経136.0度でした。マグニチュードは約7.1と推定され、各地で最大震度はVIまたはVIIとされています。この地震は、四日市、伊賀上野を含む広範囲で揺れが観測され、津、亀山、桑名でも震度Vに達しました。本震の後、最大余震は午前6～8時頃に記録されました。また、同日5時頃には失火の炎が見え始め、さらなる混乱を引き起こしました。

被害

この震災により、上野城の東・西大手門の石垣が崩壊し、当時の番人4名が命を落としました。地滑りも発生し、甚大な被害が出ました。公式な記録では死者が995名、うち伊賀上野付近で625名、負傷者は994名という厳しい結果となりました。また、倒壊した家屋は2270戸、蔵は306件にのぼりました。余震は同年7月10日（新暦8月3日）2時頃まで続き、多くの大きな揺れが報告されています。

地震の被害状況は「伊賀上野城下の被害絵図」として記録され、倒壊した家屋が色付けされて描かれています。また、薬師寺東塔も損傷を受けました。

四日市市の建福寺には「安政元年震災惨死者之碑」が存在し、裏面には火災による死者300名以上の記録があります。奈良にも大きな被害が及び、古市表では土手が決壊し、多数の家屋が流失しました。この地域では110名の命が失われ、南都（奈良市街）では2600戸以上が崩れ、200人近くが亡くなりました。

地震断層

この地震では上野の北側で西南西から東北東の方向に断層が形成され、南側では最大1.5mの沈下が見られました。

参考文献

• - 震災予防調査会 編『大日本地震史料 下巻』丸善、1904年。
• - 武者金吉 編『日本地震史料』毎日新聞社、1951年。
• - 東京大学地震研究所 編『新収 日本地震史料 第五巻 別巻三 安政元年六月十五日』日本電気協会、1983年。

伊賀上野地震は、その後の安政東海地震や南海地震の前触れとも考えられ、この時期の地震活動の重要な一部を形成しています。

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