伊賦夜坂

伊賦夜坂（いふやざか）について

伊賦夜坂は、島根県松江市の東出雲町揖屋にある歴史的な山道です。この場所は、古くから重要な古道として利用されてきました。道の途中には、地元の人々によって祀られている塞の神（さえのかみ）があり、特にこの神は道中の道祖神として信仰されています。

この道を進むと、東へ広がる谷が「夜見路谷（よみじがたに）」と呼ばれ、その谷を超える場所は「夜見路越え」と名付けられています。「夜見路」とは、黄泉路、すなわち死者の国への通り道を示しています。地元の風習として、伊賦夜坂を通過する際には塞の神の元に小石を積むことがあり、現在でもそこには小さな石たちが積まれています。これは、道を無事に通るための願いを込めて行われている伝統です。

道は塞の神が祀られている地点で二つに分かれ、左側の道を選ぶとかつては広瀬の方へと繋がっていたと言われていますが、現代では行き止まりとなっています。直進すると、イザナミが祀られている揖夜神社へと向かうことができます。

黄泉比良坂

伊賦夜坂は、古事記に記載されている黄泉比良坂（よもつひらさか）であるとされ、現世と死者の国の境目として位置付けられています。1940年には、ここが「神蹟黄泉比良坂伊賦夜伝説地」として認知され、揖屋町平賀にはその記念を刻んだ石碑が建立されました。この周辺には、イザナギが置いたとされる「千引岩（ちびきのいわ）」という巨大な岩も存在しています。

塞の神は、『日本書紀』において、イザナギが黄泉比良坂で「ここから入ってはならぬ」と言い捨てた杖から生まれた神とされています。こうした神話的背景から、伊賦夜坂は「逢いたい人に再び出会える場所」として名を馳せ、観光地としても多くの人々に訪れられています。

映画のロケ地

この場所は、2010年に制作された映画『瞬 またたき』でも撮影ロケ地として使用されています。映画では、主人公が亡くなった恋人に再会したいと願うシーンがあり、その背景として伊賦夜坂が描かれ、多くの観客に印象を与えました。

まとめ

伊賦夜坂は、歴史と伝説が息づく魅力的な場所です。道中の風習や神話に触れながら歩くことで、訪れる人々は深い歴史を体感することができるでしょう。古道を進むことは、ただの観光ではなく、過去と現代が交差する神秘的な体験でもあるのです。

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