伊達宗実 (宇和島伊達家)

伊達宗実：早世した宇和島藩主の世嗣と文化への貢献

伊達宗実（だて むねざね）は、江戸時代前期、伊予国宇和島藩の初代藩主である伊達秀宗の長男として生まれました。彼は藩主の嫡男という重要な立場にありましたが、その生涯は病弱との闘いでした。

嫡子辞退と早世

宗実は秀宗の正室の子として、まさに嫡子としての期待を一身に受けていました。しかし、彼は病弱であったため、寛永14年（1627年）に、自ら嫡子の座を辞退することを決意します。そして、その座を弟である宗時に譲りました。宗実はその後、寛永21年（1644年）に父である秀宗に先立ち、33歳という若さでこの世を去りました。

宗実の早世については、興味深い逸話が残っています。当時、和霊騒動と呼ばれる事件があり、その中心人物であった山家公頼の祟りが原因ではないかという噂が広まりました。この噂は、当時の人々の間で、事件の深刻さと宗実の死に対する関心の高さを物語っています。

文化人としての側面

宗実は、藩主の世嗣という立場だけでなく、文化人、教養人としても知られていました。彼の文化に対する造詣の深さを物語るエピソードとして、『源氏物語』の書写が挙げられます。彼は『源氏物語』を54冊にわたり丁寧に書写しました。この書写事業は、宗実の死後、弟である宗利の正室、稲姫（松平光長の娘）によって引き継がれました。このことからも、宗実の文化的な遺産が、周囲の人々によって大切に受け継がれていたことがわかります。

まとめ

伊達宗実は、宇和島藩の将来を担うべき存在でありながら、病弱のため若くして亡くなった人物です。しかし、彼は文化人としての一面も持ち合わせており、『源氏物語』の書写という形で、後世にその足跡を残しました。彼の生涯は、藩主の世嗣としての責任と、個人としての文化的な探求との間で葛藤しながらも、精一杯生きた姿を私たちに伝えてくれます。

参考文献
* 宇神幸男『宇和島藩』現代書館〈シリーズ藩物語〉、2011年7月

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