伊達村芳

伊達村芳（だて むらよし）：伊予吉田藩、苦難の時代の藩主

伊達村芳は、江戸時代中期、伊予吉田藩の第6代藩主として、激動の時代を生きました。安永7年（1778年）に第5代藩主・伊達村賢の次男として生まれ、兄の早世により寛政元年（1789年）に世子となります。寛政2年（1790年）に父の隠居と死を受けて家督を継ぎましたが、その治世は決して平穏なものではありませんでした。

藩政の苦難と武左衛門一揆

村芳が藩主となった頃、吉田藩は天災の頻発と幕府からの公役負担増大により、深刻な財政難に陥っていました。その打開策として、村芳は領民への重税を課しますが、これが領民の不満を爆発させ、寛政5年（1793年）2月には大規模な百姓一揆、いわゆる武左衛門一揆を引き起こします。

この一揆の背景には、重税に加え、藩が百姓の副業であった製紙業を専売化したことがあります。藩は紙方役所を設置し、御用商人の法華津屋に製紙を独占させ、他国へ販売することで利益を得ようとしました。しかし、この政策は百姓たちの利益を著しく損ない、生活を困窮させたため、1万人の百姓が吉田藩の本家である宇和島藩に対し、紙専売の廃止を求めて強訴を起こしたのです。

事態を重く見た藩は、最終的に紙方役所を廃止し、百姓側の11か条の要求を全面的に受け入れざるを得ませんでした。しかし、一揆の指導者である武左衛門をはじめとする人々は、その責任を問われ死罪に処されています。

文化振興と隠居

一揆という苦い経験を経た村芳は、寛政6年（1794年）に藩校・時観堂を創設し、学問を奨励することで藩の文化水準の向上を図ります。自身も寛政7年（1795年）に従五位下・若狭守に叙位・任官するなど、藩主としての地位を確立しました。

しかし、文化13年（1816年）11月、村芳は家督を婿養子の宗翰に譲り、隠居します。そして、文政3年（1820年）8月13日に43歳という若さでこの世を去りました。

伊達村芳の生涯は、藩政の苦難と領民の抵抗、そして文化振興への努力が入り混じったものでした。彼の治世は、吉田藩にとって決して忘れることのできない時代であったと言えるでしょう。

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