伝染性単核球症

伝染性単核症の概要

伝染性単核症（でんせんせいたんかくしょう）、英語ではInfectious Mononucleosis（IM）と呼ばれ、主にエプスタイン・バールウイルス（EBウイルス）の初感染によって引き起こされる急性感染症です。この病気は一般的に「キス病」とも称されています。日本における注目すべき点は、2-3歳の小さな子供たちが70%の感染を占めていることで、20代の大人では90%以上がこのウイルスに対する抗体を持つという事実です。アメリカでは、幼児の感染率は約20%であり、主に思春期や青年期に感染が見られます。感染開始時の年齢によって症状の現れ方が異なり、乳幼児の場合はしばしば症状が出ない不顕性感染が一般的です。また、青年期に感染が発生すると発熱や腰痛などの様々な症状が継続することがあります。まれに、輸血などによって血液を介して感染することもあります。

歴史

この病気は、1889年にドイツの小児科医エミール・ファイファーによって最初に報告され、欧州では「ファイファー病」として知られています。

原因

伝染性単核症の主な原因はEBウイルスの初感染です。小さい子供が感染した場合、ほとんどは症状が出ない不顕性感染となります。成人になると、80%以上の人がこのウイルスに対する抗体を持つため、成人期に初めて感染した場合に発症することが多いです。感染源は、特に飲み物の共有などが主要な要因とされています。なお、EBウイルス以外にもサイトメガロウイルスやHIVが原因となることもあります。

症状

伝染性単核症の症状は主に発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹の三大徴候です。1-2歳の幼児が初めて感染した場合、発熱と共に口蓋扁桃の膿栓や腫脹が見られることが多いですが、特異的な症状が目立たないため、この年齢層では「扁桃炎」と誤診される可能性が高いです。通常、数日で自然に回復しますが、心配する必要はほとんどありません。年長者や青年期以降に感染した場合は、発熱や全身のだるさ、咽頭痛、リンパ節の腫れが顕著に現れます。これに加え、肝脾腫も見られることがあります。

検査

伝染性単核症の診断には、血液検査が用いられ、白血球の総数や異型リンパ球の出現が検出されます。特に異型リンパ球は感染の目安になるため、血球算定を通じて診断されます。生化学的には、肝脾腫に伴いトランスアミナーゼの上昇も見られることがあります。

治療

伝染性単核症に特異的な治療法は存在せず、主に対症療法が行われます。肝脾腫が顕著であれば安静が求められ、必要に応じて入院し補液を行うこともあります。また、特定の抗生物質の投与は発疹を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

予後

この疾患の経過は通常、4〜6週間ほどで自然に回復しますが、まれに数ヶ月以上症状が続く厄介なケースもあります。こうした場合、慢性活動性EBウイルス感染症（CAEBV）として特別な管理が求められます。

以上のように、伝染性単核症はEBウイルスが原因となる病気で、その症状や検査、治療方法などは年齢や症状の進行具合によって異なるため、早期診断と適切な対処が重要です。

もう一度検索