伝染性造血器壊死症

伝染性造血器壊死症（IHN）

伝染性造血器壊死症（IHN）は、サケ科の魚類に感染するウイルス性疾患であり、主にラブドウイルス科のNovirhabdovirus属に属する感染症の一種です。この病気を引き起こすのは、「感染性造血器壊死症ウイルス」（IHNV）であり、特に10℃前後の水温で発生することが多く、そのため寒冷な環境下での魚類養殖において特に注意が必要です。

主な症状と病理

発症した魚は、狂奔するような異常な泳ぎ方を示すことがあり、外見的な症状としては、体色が黒ずみ、眼球が突出し、腹部が膨張します。また、体の側面や肛門付近にはV字状の出血が確認され、腹膜や腹腔内の脂肪組織、さらには鰾内にも点状の出血が見られることがあります。内部観察や病理学的な視点からは、血液の貯留や腎臓、脾臓の造血組織の壊死、骨格筋内での出血などが認められます。

さらには、特に稚魚においては、突然の大量死が初期症状として発生しやすく、魚体重0.5g以下の稚魚の場合、累積死亡率が60％から100％に達することもあります。逆に、成長するにつれて死亡率は低下する傾向があります。

診断方法

IHNの診断は、病歴や現れる症状、及び解剖所見に基づく推測診断と、分断ウイルスの中和試験、病理組織学による確定診断の2段階で行われます。血清学的な診断法としては、感染が疑われる魚の腎臓組織を用いたスタンプ標本や冷凍切片を使った方法、さらには経口抗体法や酵素抗体法、ELISA法が適用されます。また、ウイルスの遺伝子を検出するためにはRT-PCR法が用いられ、その確認にはDNAプローブが準備されています。

防除方法

これらの魚病を防ぐためには、発眼卵にヨード剤を用いて消毒を行うことが非常に効果的です。このような予防策を講じることで、IHNの発生を抑制し、魚類養殖業の継続的な運営を助けることができます。

関連項目

IHNに関連するその他の疾患として、ウイルス性出血性敗血症（VHS）、ヒラメラブドウイルス病（HRVD）、およびコイ春ウイルス病が挙げられます。これらの病気も魚類に深刻な影響を及ぼすため、注意が必要です。

参考文献

知識を深めるためには、以下の文献を参照することが役立ちます。小川和夫・室賀清邦編の『改訂・魚病学概論 第二版』、及び畑井喜司雄らの著作『魚病学』が特に有名です。

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