伝説の爆撃機

『伝説の爆撃機』（Van Halen II）について

1979年に発表されたヴァン・ヘイレンのセカンド・スタジオ・アルバム、『伝説の爆撃機』（原題: Van Halen II）は、前作の鮮烈なデビュー作に続く作品として大きな期待を背負ってリリースされました。彼らのキャリアにおいて、このアルバムはいくつかの重要なマイルストーンを打ち立てた作品として位置づけられています。

商業的成功

『伝説の爆撃機』は、ヴァン・ヘイレンのアルバムとして初めて全米アルバムチャートでトップ10入りを達成した記念碑的な作品です。最高位は6位を記録し、バンドの人気が確固たるものになったことを示しました。また、収録曲からは、ポップなメロディと軽快なリズムが印象的な「踊り明かそう」（Dance The Night Away）が全米シングルチャートで15位に、そして、彼ららしいロックンロール・フィーリング溢れる「ビューティフル・ガールズ」（Beautiful Girls）が全米84位にランクインするなど、複数のシングルヒットが生まれました。これらの商業的な成功は、彼らが単なるハードロックバンドとしてだけでなく、幅広い層にアピールできるポテンシャルを持っていることを証明しました。

特筆すべき収録曲

アルバムに収録されている楽曲の中には、特に言及すべきトラックがいくつか存在します。

悪いあなた（You're No Good）
この曲は、1960年代にディー・ディー・ワーウィックやベティ・エヴェレットといったR&Bシンガーによってヒットしたクラシックな楽曲のカバーです。また、この曲はリンダ・ロンシュタットが1974年に発表し、全米チャートで1位を獲得したバージョンでも広く知られています。ヴァン・ヘイレンは、このソウルフルな原曲を、彼ら独自のパワフルなハードロック・アレンジで見事に再解釈しており、デイヴィッド・リー・ロスのダイナミックなボーカルとエドワード・ヴァン・ヘイレンのギタープレイが光る一曲となっています。

スパニッシュ・フライ（Spanish Fly）
わずか1分という短いインストゥルメンタル曲ですが、「スパニッシュ・フライ」はエドワード・ヴァン・ヘイレンの卓越したギターテクニックを披露する上で非常に重要なトラックです。特筆すべきは、この曲で彼がエレキギターではなくガットギター（ナイロン弦のアコースティックギター）を使用している点です。アコースティック楽器でありながら、彼の代名詞ともいえる両手タッピング奏法を含む超絶技巧が惜しみなく披露されており、その革新性と表現力は、当時の多くのギタリストに衝撃を与えました。この一曲だけで、彼が単なるハードロックギタリストではない、幅広い音楽性と技術を持っていることを示しています。

その他にも、「サムボディ・ゲット・ミー・ア・ドクター」や「D.O.A.」といったハードな楽曲から、「輝ける空」（Light Up the Sky）のようにスピード感あふれる曲、そしてキャッチーな「オッタ・ラヴ・アゲイン」まで、アルバム全体を通して多様なサウンドを楽しむことができます。前作に引き続き、メンバー間のケミストリーが生み出す強烈なグルーヴと、ポジティブでエネルギッシュなバンドの魅力が存分に詰まった作品と言えるでしょう。

参加ミュージシャン

このアルバムのサウンドを支えたのは、以下の4人のメンバーです。

デイヴィッド・リー・ロス - ボーカル
エドワード・ヴァン・ヘイレン - ギター
マイケル・アンソニー - ベース
アレックス・ヴァン・ヘイレン - ドラムス

彼ら不動のラインナップによる演奏は、アルバム全体に渡って圧倒的な存在感を放っています。

まとめ

『伝説の爆撃機』は、ヴァン・ヘイレンがデビュー作の成功を一過性のものに終わらせず、さらなる飛躍を遂げたことを証明する重要なアルバムです。初の全米トップ10入り、ヒットシングルの誕生、そしてエドワード・ヴァン・ヘイレンの革新的なギタープレイが際立つ楽曲など、彼らの初期のキャリアを語る上で欠かせない名盤と言えるでしょう。この作品は、その後の彼らの快進撃を予感させる、勢いと創造性に満ちた一枚です。

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